『ねぇ。』
「…」
甘いものに目がない僕の彼女。
スイーツとかデザートとか呼ばれるものには敏感で、新しいお店が出来たと知れば、待ってましたとばかりに買いに行く。
今だってほら。
駅前に新しいクレープ屋さんが出来たらしくて、買ってきたばかりのクリームがたっぷり入ったバナナクレープを美味しそうにほうばっている。
せっかく僕の家に遊びに来たのに、部屋に入るなり君はクレープの虜。
僕だってクレープ相手にやきもちなんか妬きたくないけど、それにしたって酷すぎない?
僕の扱い。
『ねぇってば。』
「んー?」
僕に体を委ねて甘えて来るのは嬉しいけど、君を後ろから抱き締めてる僕は、君の顔がよく見えなくて物足りない。
斜め後ろから見る君のほっぺは、クレープを含んでちょっと膨らんでいる。
もぐもぐのリズムがよくわかる丁度良い角度。
「周助も食べればー?」
そう言って振り返る君の口元には、オフホワイトのクリームが付いている。
くりっとした瞳に、半分のサイズになったバナナクレープを持って。
クレープの箱の中には、 周助の分 と君が買ってきたもうひとつのバナナクレープ。
クレープを食べるのもいいけど、僕は君を構いたいのに。
「周助?何すねてんの?」
君は何も分かってない。
君が構ってくれないからでしょ。
だからその代わりに、君を僕の腕で捕えるんだ。
僕の中に閉じ込めてやるんだ。
『僕の虜にはならないの?』
とりこー?何それー? と呑気な君。
そんな君の口元に付いたクリームを掬うようにぺろっと舐めた。
『僕も食べようかな。』
Captive!
(ちょっと周助、どこ触ってんの!)
(え?だめ?)