ハロウィンパーティー
□プロローグ
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とある町の一軒家に、魔女リーテとその使い魔の黒猫ルイが仲良く暮らしていた。
そんなある日の夜、リーテの元に不思議な招待状が届いた。
そこにはこう書かれていた。
『ハロウィンの夜に、一夜限りの催しはいかがでしょう?共に素晴らしき夜を堪能しようではありませんか。貴女様のご参加の程、お待ちいたしております』
リーテはその手紙を不思議そうに眺めていた。
「ねえ、ルイ……何なのかなあこれ?」
「さあね……僕にも分からないよ」
見れば見るほど興味を惹かれ、気付けばその手紙に釘付けになっていた。
その様子を見ていたルイが察したように口を開く。
「興味、ありそうだね」
「うん、とっても気になる」
リーテはその招待状の細部まで見通してみた。
しかし、招待状の中には先程の手紙と白紙のカードしか入っていなかった。
「何だろう、これ?」
リーテは白紙のカードを手に取ってみる。
すると突然、カードが光り出したのだ。
「え、何!?」
カードには魔方陣のような物が浮かんでいた。
それと同時に手紙にも文字が浮かび上がる。
そこにはこう書かれていた。
『貴女様はパーティーに参加することを望みました。その望みを叶えて差し上げましょう。どうか良い夜をお過ごしになって下さいませ。ようこそ“ハロウィンパーティー”へ』
「リーテ!」
リーテは次第にカードの中へと引き寄せられていく。
それを見たルイはリーテの肩へと跳び乗る。
「リーテ、僕も行く!」
「ルイ……」
リーテはルイを胸元でぎゅっと抱き締める。
やがて一人と一匹はカードの中へと完全に吸い込まれてしまった。
気が付くとそこは見知らぬ場所だった。
「うーん、ここは……」
辺りを見渡すとそこは広々としたホールのような場所だった。
大きく豪華そうなテーブルがたくさんあり、椅子にはたくさんの人が座っていた。
天井にはシャンデリアが取り付けられ、前方にはステージのような場所まであった。
「わあ、凄おい!」
リーテは思わず感嘆の声を上げる。
「へえ、随分豪華な建物だね」
ルイは物珍しそうに辺りをキョロキョロする。
「ねえルイ、私こんなの初めてだよ! 何だかわくわくしてきた!」
「あはは、リーテったらすっかりはしゃいじゃって」
「ようこそおいで下さいました!」
リーテとルイが話していると、突然誰かに呼び掛けられる。
声の方へ振り向くとそこにはピエロの格好をした人がいた。
「えっと、誰?」
「これは失礼いたしました、私はこのパーティーの主催を務めさせていただくピエロです。以後お見知りおきを」
ピエロは深々と礼をする。
「貴女方のことは存じております。魔女リーテ様とその使い魔、黒猫のルイ様ですね?」
「へえ、僕達のこと知ってるんだ」
「もちろんです、参加者のことは全て把握しておりますよ。このパーティーには様々な異能の力を持った者達がご参加されています。中にはリーテ様と同じ魔女も来ていますよ」
ピエロは穏やかな口調で説明する。
リーテはその説明を終始興味深い様子で聞いていた。
ピエロと話している途中で突然部屋が暗くなる。
「え、何が起こったの?」
「そろそろ始まるようですね、私も次の仕事があるのでここで失礼いたします。それでは良い夜をお過ごし下さい……」
部屋が暗くなったかと思えば、次の瞬間ステージにスポットライトが当てられる。
それと同時に会場に歓声が沸きあがる。
ステージの上には一人の少女が立っていた。
白色の長髪に、白を基調とした服を着た明るそうな女の子だった。
年はリーテと変わらないように見える。
『お待たせいたしました、人形遣いロザリーによる人形劇です。どうぞお楽しみ下さい。』
続いて放送が流れる。
その声は先程のピエロの声と似ていた。
ついさっきまでそこにいた筈なのにいつの間に移動したのか、能天気なリーテは疑問に思わなかった。
「はーい人形遣いのロザリーちゃんでーす! 人形劇を披露しまーす!」
元気な、それでいて少しおっとりとした声が響き渡る。
それと同時に歓声も大きくなる。
そしてどこからともなく人形が現れ、ロザリーと共に劇を始める。
その人形劇は歌と踊りが織り成すミュージカルだった。
リーテとルイはその人形劇に引き込まれていた。
「あの人形達、凄く可愛いね!」
「うん、踊りも上手で思わず見入っちゃうよ!」
すっかり夢中になって見ていると、人形劇もとうとう終わりを告げた。
「みんな見てくれてありがとう! ロザリーちゃんの人形劇でしたー!」
ステージからロザリーと人形達が退場する。
「面白かったね、ルイ!」
「そうだね、僕も来て良かったよ」
それからもそのパーティーは進行していった。
様々なイベントが行われ、その度に心を躍らせていた。
そして遂にその時が来たのだった。
『それでは本日のメインイベントを行いたいと思います』
「メインイベントだって、何だろうねリーテ」
「とっても楽しそう!わくわくしちゃうな」
『会場の皆様にはこれから宝を巡って競争してもらいます。ルールは簡単、まずはこの会場を後にし宝の眠る城を目指して下さい。宝の名は星の雫といい、手にした者は一つだけ何でも願いを叶えることができるのです。城への地図は皆様にお配りします。期限は夜明けまでです』
司会のピエロは淡々と説明していく。
「願いを叶える宝に、城だって? 話が急すぎるな。」
「面白そうじゃない! ね、ルイ?」
「それはそうだけど、君はその宝に何をお願いするんだい?」
「そんなのは後で考えればいいのよ!」
「やれやれ、君はいつも後先考えないんだから。」
『質問はありませんね?それではこれより、一夜限りの大イベントをスタート致します。カウントダウンが始まりますのでゼロになってから開始でございます。それでは、5……4……3……2……1……』
会場が静まり返る。
リーテは目を輝かせながら開始を待ち、ルイはその様子を見守っていた。
『ゼロ!』
その声と同時に客席にいた人々が会場の外へと駆け出す。
リーテとルイもそれに続く。
「行くよ、ルイ! 絶対私達が勝つんだから!」
こうして、長い夜が幕を開けたのだった。