リストラ怪奇譚

□第6話 東方解々雇〜Ancient Company
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根森「どうだ?金は集まったか?」
堀部「全然駄目だ・・・。」
枯鐘「俺もだよ・・・。」
菊崎「俺もだ・・・。」
滋賀野「私もだ、すまない・・・。」
根森「はぁ、やっぱ駄目か・・・。」
路地裏に待機している彼等は、物乞いを行っていた。
だが、一向に収穫を得られる気配がなく途方に暮れていた。
菊崎「俺達はただ待ってるしかないってことなのか・・・?」
根森「でも、じっとしてられないだろ。」
滋賀野「ここにずっといればいい、2人から連絡が来るまではな。」
根森「そうだな・・・。」
「そなたら、何をしている?」
根森「?何だ?」
突然彼等に1人の男が話しかけてきた。
男は和服を着ており、刀を携えている。
「拙者は烏浪隻 魁焔・・・ただの通りすがりだ。」
根森「俺にはお前が普通の奴には見えないんだが。」
滋賀野「何者だ?何をしに来た?」
烏浪隻「拙者が何者かなどどうでもよいことだ。
    そなたら、乞食であろう?家がないのか?」
滋賀野「そうだ、それがどうした?お前に関係あることか?」
烏浪隻「確かに、拙者には関係のないことだ・・・。
    だが拙者の役目などこれしかない。」
枯鐘「何をする気だ?」
烏浪隻「そなたらの命は保証しよう、それ以上は自らの手で切り開くがよい。」
滋賀野「どういうことだ?」
烏浪隻「そなたらが死ぬことは無い、拙者が保証しよう。」
菊崎「生活を保証してくれるってことか?」
烏浪隻「悪いがそれはできない・・・だがそなたらに死が迫った時、そなたらを救う。
    それが、拙者の役目だ。」
根森「よく分かんねぇけど、要するにお前は俺達の味方なんだな?」
烏浪隻「そうだ、それは常に変わらない。」
根森「分かった、覚えておくぜ。」
烏浪隻「ああ・・・早速手助けしよう、これが今日の食料だ。」
根森「すげぇ、本当に味方だぜこいつ・・・。」
滋賀野「・・・ありがたく頂戴する。」
菊崎「おにぎりにパンか・・・調理が必要な食料はないな。」
烏浪隻「悪いな、調理して渡すことは難しい・・・。」
枯鐘「何で?料理下手のか?」
烏浪隻「・・・それもある、な。」
堀部「何故俺達に協力する?何か理由でもあるのか?」
烏浪隻「理由など必要ない・・・ただ、これが拙者にできることだというだけだ。
    それでは拙者は失礼しよう・・・。」
そうして謎の男、烏浪隻は去っていった・・・。
滋賀野「烏浪隻 魁焔・・・何者だろうか。」
根森「ま、せっかく食料も手に入ったし良いんじゃねぇか?」
滋賀野「そうだな。」
菊崎「もうしばらくここにいようぜ?」
滋賀野「ああ、2人が帰るまではここにいよう。」

冴木「遥誠君、調子はどうだい?」
伊藤「絶好調っスよ!」
冴木「そうか、ならよかった・・・それ今日中に終わりそうかい?」
伊藤「全然余裕っスね。」
冴木「フフ、君ならそう言うと思ったよ。
   僕でもできなかったというのに、君は大した人だ。」
伊藤「エッヘヘヘ、まあまあ。」
冴木「では、あのハゲ部長をあっと言わせてみましょうか・・・。」
伊藤「・・・そうだな。」
冴木「僕等2人の力をもって、この会社を我がものにしましょう・・・。」
伊藤「ん?あれ河辺部長じゃないっスか?」
冴木「どれどれ?おや、本当ですねぇ・・・どこに行くんでしょうか?」
伊藤「様子見にいっちまいましょうぜ!」
冴木「確かにそれは必要かもしれません・・・。
会社の動向を探ることはとても重要なことです。
でも君にはその仕事がある、君が行くべきではない。
・・・私が行きましょう。」
伊藤「えぇ?全然余裕っスよ?」
冴木「その余裕は時に命取りになる、慎重に越したことはない。」
伊藤「・・・チェッ、わぁーったよ・・・待っててやるよ。」
冴木「残念なのは分かりますよ、あのハゲ部長、誰かに呼ばれたのかも知れません。
   上司にペコペコ謝罪するマヌケな姿を拝みたいのは当然ですからねぇ。」
伊藤「いいから行って来い、見失っちまうぜ?」
冴木「それでは行って参ります、お仕事頑張って。」
伊藤「あっそうだ、録画もしておけよ。」
冴木「ヘヘヘ、了解。」
冴木は河辺の後をついていく。
決してバレないように、常に遠くを歩きながら。
周囲から不審に思われないよう、さりげなく。
少しずつ、歩を進めていく。
やがて河辺は扉を潜っていった。
ここから先は人も少なくなり、周囲の目を気にする必要もなくなる。
だが、その分河辺に気付かれやすくなる。
冴木は扉を開け、中に入る。
河辺は冴木に気付くことなく先へ進んでいく。
そして、最も人通りの少ない社長室の近くにやってきた。
河辺は社長室の扉を開け、中に入る。
冴木「・・・。」
よりによって社長室に入られてしまったか。
想定はしていたが・・・。
まずいな、これじゃ様子は確認できない。
・・・持ってきてよかった。
この、超小型カメラ。
これを扉の隙間に差し込めば、録画はできる。
フフフ、後で遥誠君と一緒に見よう。
楽しみだなぁ・・・。
・・・
そして冴木はその場を離れ、物陰に隠れる。
河辺が扉を開けて、遠くに行ってからカメラを回収する。
待っている間は退屈だった。
待ち遠しく、早くカメラを持ちかえりたいと願っていた。
「何をしているの?」
冴木「!?」
突然後ろから女の声が聞こえる。
冴木は振り向いた。
冴木「何だ弑那ちゃんじゃないか。」
弑那「何だじゃないでしょ?何をしていたの?」
冴木「何でもいいじゃないかぁ、君には関係ないだろ?」
弑那「私が社長秘書だってこと忘れてない?
   社長室の前で隠れてる人を見過ごすわけにはいかないでしょ?」
冴木「そう言えばそうだったね。」
チッ、弑那に見つかったか。
面倒だな。
弑那「さあ言って、何をしていたの?」
冴木「河辺部長が社長に呼ばれたのは知っているかい?」
弑那「知らないわ、そうだったの?」
冴木「そうなんだよ、それで僕は様子を見に・・・ね。」
弑那「確かに部長の様子が気になるのは分かるわ。
   でもこんなところにいたって何の意味もないでしょ?」
冴木「そうだね。」
弑那「それに貴方の仕事もあるはず・・・だから持ち場に戻りましょう?」
冴木「・・・。」
まずいな。
このままでは持ち場に戻されてしまう。
カメラのことを話すか?
後でまた来るか?
どちらも危険だ。
どうする?
僕が選んだ答えは・・・。
冴木「分かったよ、戻るよ・・・1人で戻れるから。」
弑那「うん、またね冴木君。」
弑那は去っていった。
冴木「・・・。」
フフフフフフ・・・。
いなくなった。
僕を信用し過ぎだ。
やっぱり社長秘書である弑那 則子と仲良くなったのは正解だったな。
こういう時、役に立ってくれる。
アハハハハハハ!
僕の計画は完璧なんだよ!
僕ならできる!
この会社を乗っ取れるぞ・・・!
それからしばらく後、河辺が出てきた。
河辺はさっき来た道を戻り、遠くへと消えていった。
何やらそわそわしていたように感じた。
冴木「今だ・・・!」
冴木はカメラを拾い、来た道を戻っていった。
ついにやついてしまう。
笑いを堪えるのが大変だった。
そうして冴木は伊藤の元に戻った。
冴木「遥誠君、録画してきたよ!」
伊藤「結構長かったスね。」
冴木「うん、あいつ社長に呼ばれたらしいね。
   流石に様子は見れなかったけど、このカメラでバッチリと!」
伊藤「・・・もうすぐお昼休みスね、そん時見ますか。」
冴木「そうだねぇ・・・ウフフフ、楽しみだよ・・・。」
伊藤「・・・全くだぜホントによぉ・・・ククク。」
そして昼休みの時間がやってきた。
冴木、伊藤の2人は冴木の家に行き、カメラの中身を確認していた。
冴木「では早速見てみましょうか・・・。」
・・・・・・・
河辺「お呼びでしょうか、倉井瀬社長。」
倉井瀬「河辺部長、君に聞きたいことがある。」
河辺「何でしょうか?」
倉井瀬「田中と笹野を解雇したのか?」
河辺「はい、その通りであります。」
倉井瀬「・・・何故だ?」
河辺「田中は私の紅茶にタバスコを入れてきたのです!だから解雇しました。
   現在は伊藤という者を代わりに採用しました。
   笹野は、冴木という者が代わりになるので不必要と判断し解雇しました。」
倉井瀬「何故君の独断で解雇をするんだ!!」
河辺「・・・は?」
倉井瀬「田中も笹野も、私が信頼する部下だった、代わりなどはいない!」
河辺「しかし田中も笹野も私にとってはとても信頼のできる部下ではありませんでした。」
倉井瀬「それがどうした、君が彼等をどう思おうと私の知ったことではない。
    君は一体何様だ?権力があるとでも思っているのか?」
河辺「しかしもう2人の解雇を取り消すことはできません。」
倉井瀬「彼等は今どうしている?分かるか?」
河辺「・・・路地裏で団体生活をしていると冴木が言っていました。
倉井瀬「路地裏だと?そんなところで暮らしているのか?」
河辺「そのようです・・・。」
倉井瀬「河辺部長、君のせいだよ。」
河辺「申し訳ありません・・・。」
倉井瀬「2人に、協力してくれるね?」
河辺「・・・何をすれば?」
倉井瀬「君は減給だ、その分を2人に寄付する。」
河辺「!?」
倉井瀬「よろしいね?」
河辺「は、はい・・・。」
倉井瀬「2人は団体生活をしていると言ったね?集団に所属でもしているのかい?」
河辺「そのようです・・・無職の団体に所属しているそうです。」
倉井瀬「そうか・・・だが君は2人分の金を出してくれればいい。
    他の者達は君とは関係ないからな。」
河辺「分かりました・・・あと聞きたいのですが。」
倉井瀬「何だ?」
河辺「冴木と伊藤はどうなりますか?」
倉井瀬「君が彼等の代わりに雇ったんだ、君が責任を持て。」
河辺「分かりました。」
倉井瀬「ところで河辺部長、その団体はどこにあるか分かるか?」
河辺「私は分からないのですが、冴木に聞けば分かると思います。」
倉井瀬「そうか・・・なら昼休み後にでも呼んで聞いてみるか。
    私からは以上だ、君は持ち場に戻りたまえ。」
河辺「分かりました、失礼します・・・。」
・・・・・・・
冴木「ウフフフ・・・ざまあないね部長。」
伊藤「だが八郎君、昼休みが終わったら社長に呼ばれちまうぜ?どうすんだ?」
冴木「あの団体のことを詳しく話すのは得策ではないね・・・。」
伊藤「大丈夫だ、田中と笹野がどうなろうと俺達には関係ねぇさ。」
冴木「言ったはずだよ、慎重に越したことはない、とね。
   解雇を取り消すのは無理と言っていたけど、安心はできない。
   あの2人はずっとあのままであるべきだ。
   そう、集団もろとも野垂れ死にするくらいがいい。」
伊藤「確かに死ねば本当に2度と会社には戻ってこないからな。」
冴木「2人が帰ってくれば僕等は会社から外されるかもしれない。」
伊藤「慎重に考えればそうなるが、それは考えにくいな。
   2人より仕事のできる俺達を解雇する理由がねぇ。」
冴木「倉井瀬社長・・・仕事のできより信頼を重視する人と見た。
   僕等よりもあの2人を信頼してるみたいだし・・・。
   僕等を会社から外しても何も不思議はないよ。」
伊藤「俺達は部長に信頼された。
   八郎君は社長秘書にも信頼された。
   次は社長の信頼を得る番かも知れない。」
冴木「そうだね・・・僕ならそれはできる。
   社長に協力するんだ、例の無職の集団について調べて話す。
   真実を話すのがまずい時は偽っても構わない。
   とにかく情報を伝える、そして信頼される。
   結果、社長は僕を頼るしかなくなる。
   僕の情報など信用できないのに、だよ。」
伊藤「そうすれば八郎君は外される心配はないな。」
冴木「そして君はこの僕よりも仕事ができる。
会社になくてはならない存在になるだろう。」
伊藤「・・・そろそろ戻るか。」
冴木「そうだね。」
そして2人は会社に戻っていった・・・。
冴木「僕はこの後社長に呼ばれる、それじゃあ遥誠君、また後で。」
伊藤「おう。」
冴木は自分の席に戻る。
しばらく社長からのお呼びを待っていた。
「冴木君。」
冴木「やあ弑那ちゃん、また会ったね。」
弑那「社長がお呼びよ。」
冴木「分かった、行ってくるよ。」
冴木は先程行った社長室を目指す・・・。
冴木「失礼します。」
倉井瀬「・・・君が冴木君か。」
冴木「冴木 八郎と申します。」
倉井瀬「私はこの会社の社長、倉井瀬 俊郎だ・・・よろしく頼む。」
冴木「よろしくお願いします。」
倉井瀬「君のことは弑那君から聞いていたよ、仲がいいらしいな。」
冴木「はい、入社したての頃この会社のことを教えていただきました。」
倉井瀬「そうか、では早速だが本題に入ろう。
    君がこの会社に来る前、田中 ヒロシと笹野 幹哉の2人がいた。
    君は知っているか?」
冴木「はい、存じております。」
倉井瀬「しかし2人とも解雇されてしまった。
    そして田中の代わりに伊藤 遥誠が、笹野の代わりに君が入った。」
冴木「はい、伊藤をこの会社に招き入れたのは私でございます。」
倉井瀬「そうだったのか?」
冴木「はい、河辺部長の命令でした。」
倉井瀬「伊藤は信頼できるか?」
冴木「はい、もちろんですとも。」
倉井瀬「君も信頼して、いいのかな?」
冴木「はい、協力していくおつもりです。」
倉井瀬「そうか・・・それで、田中と笹野の現在なのだが・・・。
    2人はある無職の団体に所属し、
路地裏での生活を余儀なくされているらしいのだが・・・。
河辺部長は君なら知っているといっていたが本当なのか?」
冴木「本当でございます、詳しくはまだ分かっていないのですが。
   どこにいるのか、その場所は把握しております。」
倉井瀬「教えてくれないか?」
冴木「分かりました、お教えします・・・。」
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