リストラ怪奇譚

□第7話 解雇俺欲金時〜How much?
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河辺「まさかあの仕事を一日でやり遂げるとはねぇ、正直驚いたよ。」
浦部「今まで誰もできた者などいなかったのに・・・あの笹野や冴木でさえも。」
河辺「おかげでラーメンを奢らされる羽目になったよ。」
浦部「やはり田中と笹野の代わりにあの二人を雇ったことは正解ですね。」
河辺「君もそう思うだろう?でもあの無能社長は違ったみたいだ。
   信頼のおける部下を勝手に解雇したことで僕は減給だよ。
   ふざけんなよ全く・・・あの社長は駄目だね。」
浦部「・・・そうですね。」
河辺「君は、僕の味方だよね?」
浦部「もちろんで御座います・・・この浦部 泰造、貴方に忠誠を誓います。」
河辺「うんうん、じゃあ僕は伊藤の様子を見てくるよ。」
浦部「分かりました。」

冴木「おや?部長が来たみたいですよ?」
伊藤「そうみてえだな。」
河辺「やあ、伊藤君、冴木君、元気かい?」
伊藤「絶好調ッスよ!」
冴木「私もです。」
河辺「それはよかった・・・ところで今日の仕事だけど・・・。
   実は昨日やってもらったのが三日分の仕事なんだよ。」
伊藤「そうッスか・・・まああの程度なら一週間分は楽勝ッスね。」
河辺「いや、君にあげられる仕事は昨日君が全部終わらせてしまったんだよ。
   だから君はあと二日の休暇があるんだ。」
伊藤「なるほど・・・。」
冴木「(これはチャンスだ・・・二日間遥誠君を自由に動かせる・・・。)」
河辺「まあ何かあったら呼ぶから、今はここにいるなり帰るなり好きにしててよ。」
伊藤「分っかりましたあ!」
河辺「じゃあ僕からはこれで。」
河辺は去っていった。
伊藤「へっ、まさか二日も休暇をくれるとはな!」
冴木「それくらい予想外の出来事だったんだろうね。
   あの仕事を終わらせるなんて前代未聞だから。」
伊藤「仕方ねえ、オレ一人で行くか。」
冴木「それじゃあ地図をあげるよ。」
伊藤「ありがとよ、そんじゃ行って来るぜ。」
冴木「フフフ、行ってらっしゃい。」

田中「よし、準備できたな。」
笹野「大分皆さんを待たせてしまいましたね、すぐに帰りましょう。」
綾瀬「路地裏同盟って、どんな人達なのかな!楽しみ〜!」
田中「運転はオレがやる。」
笹野「分かりました。」
三人は車に乗り込む。
田中「途中で銀行にも寄ろう、そこで全額卸す。」
笹野「そうですね。」
綾瀬「それにしても、お金いっぱいだね。
   これだけあればしばらくは物乞い生活から抜け出せるかも!」
笹野「しかしのんびりはしていられません。
   収入が無い以上、いつかは無くなりますから。」
田中「そうだな。」

伊藤「さって・・・ここだな?確かに路地裏だなぁ。
   見たところメンバーは五人いるみてーだ。
   どいつが田中と笹野だろうか。
   ・・・接触するか?」
伊藤は考える。
伊藤「味方の振りして接触するのも、いいかもなぁ・・・。
   冴木に相談してみるか。」
伊藤は携帯を取り出し、冴木に電話する。
「何だい?」
伊藤「やあ八郎君、奴等に接触するべきか?」
「そうだねぇ、接触して様子を見るべきかな。
 田中と笹野の様子も気になるしね。」
伊藤「そうかい、分かったぜ。」
「それじゃあまたね。」
伊藤「おう。」
伊藤は電話を切る。
伊藤「さて、と・・・。」
「お主、そこで何をしている?」
伊藤「・・・何スか?」
烏浪隻「拙者は烏浪隻 魁焔、放浪者だ。」
伊藤「放浪者・・・で、その放浪者がオレに何の用で?」
烏浪隻「とぼけるな、貴様ここで何をしている?
    こんなところにいるとは普通ではないようだが。」
伊藤「別に、ただの通りすがりッスよ。」
烏浪隻「こんな場所に通りすがり、だと・・・?」
伊藤「そう言うアンタこそ、何でこんなとこにいるんスか?」
烏浪隻「拙者は彼等に用があるのだ。」
伊藤「へぇ〜、さっき放浪者って言ってたけどさぁ、アンタ乞食ッスか?」
烏浪隻「・・・そうだ、だから貴様には関係無い。」
伊藤「なるほど、じゃあ彼等もそうなんスね?」
烏浪隻「ああ。」
伊藤「(なるほど、聞いた限りだと奴等が例の集団で間違い無いな。
そしてこいつもその仲間、と・・・。)」
烏浪隻「分かったら立ち去るがいい、ここは貴様の来る場所ではない。」
伊藤「いえいえ、オレも協力しますよ!」
烏浪隻「何だと?」
伊藤「オレにも協力させてくださいよ。」
烏浪隻「・・・何が目的だ?」
伊藤「目的って・・・オレは何も企んじゃいねぇッスよ。」
烏浪隻「先程も、何故ここにいるのかという質問に答えなかった。
    通りすがりとも考えられん、貴様は怪しすぎる。」
伊藤「まあ怪しむのも無理ないッスよ、でもオレは本気ッス。」
烏浪隻「・・・駄目だ、ここは通せん。」
伊藤「(こいつは通してくれそうにねぇな、一旦引くか?
    いや、こいつに顔を覚えられたのは厄介だ。
接触がし辛くなる・・・ならここでこいつを始末するか?
いや、落ち着け・・・すぐに人を殺すのはオレの悪い癖だ。
それにオレはもう、そっちの道からは足を洗ったんだ。
今はあの時とは違う、慎重に行動しねぇと・・・。)」
烏浪隻「大人しく引くか、それとも・・・拙者を倒してここを押し通るか。」
伊藤「(奴等の警戒心が強まると、今後接触することはできないだろう。
    ならこいつは、何としても止めねぇと・・・。)
    仕方ねぇな・・・もうやりたくはなかったが・・・。」
烏浪隻「戦う気か?」
伊藤「そのつもりだぜ、アンタはオレの顔を知っちまった。
   もう生かしちゃおけねぇぜ。」
烏浪隻「やはり貴様は何か企んでいるようだな。」
伊藤「ああ、だがそれを知ってどうなる?テメェは今から死ぬんだからよォ。」
烏浪隻「(雰囲気が変わった?)」
伊藤「オラァ、どうした・・・来いよ。」
烏浪隻「ハッ!」
烏浪隻は伊藤目掛けて刀を振る。
しかし、伊藤はそれを素手で受け止める。
烏浪隻「何・・・!?」
伊藤「こいつは、日本刀じゃねぇか・・・。
   でもなァ、オレは見慣れてんだよ・・・そういう世界で生きてきたからなァ!」
伊藤は素手で刀を折る。
伊藤「さぁて、これでテメェは丸腰だ・・・どうするよ?」
烏浪隻「クッ・・・!」
烏浪隻は路地裏同盟の元まで走ろうとする。
伊藤「逃がさねぇよ!」
烏浪隻は後ろから組み付かれる。
伊藤「ギャハハ!捕まえたぜぇ・・・覚悟しやがれ。」
烏浪隻「クッ・・・不覚。」
伊藤「まずはこの邪魔な腕を封じなきゃなァ?」
伊藤は烏浪隻の右腕をあらぬ方向へと曲げ・・・。
ゴキッ
と鈍い音がした。
烏浪隻「グッ!ハァ・・・。」
しかし、それでも烏浪隻は走ろうとする。
伊藤「何だァ?まだ立てんのかァ?大人しくしてりゃぁすぐ殺してやんのによ。」
伊藤は烏浪隻を仰向けに押し倒し、膝に肘打ちをする。
烏浪隻「ぐあ・・・!」
伊藤「ふぅ〜、これでもう立てねぇな?」
烏浪隻「貴様は、何者だ・・・?こんな力、普通ではない・・・。」
伊藤「オレか?そうだな・・・これから死ぬアンタに、冥土の土産に教えてやるよ。
   アンタも聞いたことくらいはあんだろ?こーんな、刺青を入れた連中をよォ。」
烏浪隻「ッ!」
その刺青が意味すること・・・それは彼が、そういう集団に属していたということだ。
伊藤「まあ、オレは“元”だけどな・・・。
ヤクザにいたんじゃ、あんな会社に入れねぇしな。
アンタも凄腕の剣士らしいが、元ヤクザには勝てなかった訳だ。
そんじゃあさっさと死ぬか?」
烏浪隻「クッ・・・ここまでか。」
伊藤「へっへっへ・・・これが何か、分かるかい?」
烏浪隻「それは・・・。」
伊藤「これは、サイレンサーと言ってな・・・銃声を消せる銃だ。
   今ここでテメェを殺しても、しばらくは誰も気付かねェ。
   そんじゃ、チェックメイトだ・・・ギャハハハハ!死ねェ!!」
伊藤は引き金を引いた。
その弾丸は確かに命中した。
辺りに血が飛び散る。
伊藤「(しっかりと距離を取ったから返り血は浴びてねぇな?よし
そんじゃ、改めて奴等に接触しますか!)」
伊藤は、まるで先程の出来事など嘘のように、その場を去って行った・・・。
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