赤い扉

□はじめて、ということは
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三日後。

隣に越して来た若い夫婦が挨拶に来たようじゃ。
小間使いの弥太郎に言って、奥の間まで通させる。

「お初にお目にかかります。元木寛治にございます。これは、妻の絹にございます。」
「はじめまして。妻の絹と申します。」

何と仲の良さそうな夫婦じゃろうか。
何だかちょっかいが出したくなったのぅ。
「誠に可愛らしい嫁さんじゃの。お主らの馴れ初めは、橋の上かの?」
「え?え〜と…」
「……」
「…」


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
若い夫婦はもう帰った。かなり話し込んでしまったが、本当に若い事は素晴らしいのぅ。それだけで、美しい…。

「ワシの馴れ初めは…」
ズズッ…


村田爺は茶を啜りながら考えた。彼が中洲町に住み着いてはじめての客人であった。はじめての客人。稀に見る鋭い目つきの御仁とその美しい妻。
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