長編、連載夢
□現実逃避 壱
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「何用?」
自分の眠る、薄暗い洞窟に入って来た彼に、私は問うた
「力を 借りに来た」
男の声が返ってくる
私は、伏せていた頭を少しだけ上げた
「…何故?」
「目的を 果たすため」
「……そうか」
暗くて見え辛いが
私の見た彼の眼は真剣そのものだったから
思わず、口角が吊り上がる
「分かった」
そう応え
立ち上がった私を見下ろす形で、彼は一言言った。
「…条件は?」
「一緒に、連れて行きたい者がいる。……行方は、不明だが」
「分かった。後でそいつの身体的特徴を教えてくれ」
返事の代わりに、小さく頷く
「契約成立…だ。もうここを出よう、気分が悪い」
「…私が眠っている間に、随分とここも古くなったもんだ」
出口に向かおうと、足を前に出す。
体中の筋肉が、久々に請ける命令により、少しづつ動く
「……相当、鈍ったな」
口をついて出た一言に、彼は大丈夫か、と手を差し出した