桜色舞う頃

□第六話
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「説明している暇はない。永倉、そいつを別室に連れて行け。斉藤は報告を。
……冬姫、これの説明をして貰うぞ。山南さんと総司は前川邸の様子を報告してくれ」


土方の指示で場が動き出す。永倉は戸惑いながら土方の指示に従い、広間を後にした。


「…っ。――――――…て」

「冬姫ちゃん?」

「待て…。待てぇ…っ!!」


静かに佇んでいた【冬姫】が急に叫びだし、永倉の後を追うために走り出す。

いきなりの事に周囲にいた者たちは彼女を止める事が出来なかった。


――――たった一人を置いて



「冬姫ちゃん!待ちなよ!!」

「つっ…。『沖田総司』!?離せ!!離せぇ…っ!!」

「離せって言われても、離すことなんて出来なよっ!それに、アレでも貴重な戦力には変わらないからね。殺させないよ!」


抱きかかえるように【冬姫】を止めた沖田は、暴れる【冬姫】を抑え込もうと必死に踏みとどまる。

どこにそんな力があるのかと疑うほど、抑えるのに一苦労だ。


――― ガリ…ッ


不意に彼女の手が頬に触れ、爪でわずかに頬を傷つけた。


「…っ」

「総司!」

「おい、大丈夫か!」


鮮血が彼の頬から流れ落ちる。

慌てて駆け寄る仲間を横目で見ていた沖田は、急に大人しくなった【冬姫】の顔を覗きこんだ。

身体が震え、唇から音にならない声が漏れていた。




「あ…っ、あぁ…っ!!」




「冬姫ちゃん?」

「あぁ…。………さい。ごめんなさい…ごめんなさいッ!!! ……     !!!」

「冬姫ちゃん!!」

「ごめんなさい!…ごめんなさい。…ごめん…なさ…い…。     ……」

「ちょっ!?なんで急に謝るの…って、寝て…る?」


身を預けぐったりとした冬姫を抱きかかえた沖田は、その急激な展開に肩の力を抜いた。

どっと疲れが出てきた状態で冬姫を支えながら、彼女の頬にかかっている髪を退けてやる。

閉じられた瞼にうっすら涙が溜まっているのに気付き、何気なくその滴を拭ってやった。

そんな二人を見ていた皆は、ほっと肩の力を抜いた。中には脱力している者もいるが。


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