桜色舞う頃
□第十四話
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爽やかな朝…ってはいかないか…。
いつもと同じ炊事場の戦場に立ち、隊士たちをいつも以上にこき使う。
「あっ!組長たちの朝餉は早めに持って行って!
なんでも重要な集まり事があるっていうから、さっさとすませるって」
その言葉にみんな不思議そうにしながらも、手際よく配膳していく。
うはっ♪日頃ビシビシ指導してるから、早くて綺麗♪うんうん、やっぱり鍛えれば出来る子たちだ!
そんな朝の戦場を見ながら、ふっと昨日見た『小柄な人物』を思い出す。
土方さん達に連れて行かれちゃったってことは、頓所のどっかにいる筈だよね…。
朝ごはん作った方がいいのかな…?
お腹空いちゃってるよね…。
よし!区切りがついたら、おにぎりでも持って行ってあげよう!
細いから小さめにして、梅干しでもいれれば十分だよね。
うっし、と頷き出来あがった膳から運び出すよう指示を出していく。
今日は『いろんな事』が起こりそうだわ…。
「………へえ〜っていうことは、その子の話を聞いてから処分を決めるの?」
「ああ」
ずずず〜とお茶を飲みながら聞いてみると、土方さんは渋い顔、近藤さんも眉をよせていた。
山南さんは何を考えているのか分からない、いつもの冷たい微笑みだし。……怖いな〜。
対して一と沖田は無表情と薄い笑み…。平助は昨日の事もありむくれてるし、それをつっついて新八と左之がからかってる。
源さんは困ったように苦笑いと皆バラバラな反応だ。
「ふぅーん……、私は事後処理してただけだから口出しできないけど、無闇に脅すような事だけはしないで下さいね」
「心配は無用だ。しかし、我々としても見過ごすわけにはいかないからな。…話を聞く必要はある」
「わかってます。んじゃ、その子、私が連れてきますよ〜。
あ、居場所って私の部屋の三つ隣りでいいんですよね?」
「雲月君、君がかい?私が連れてこようかと思っていたんだけどね…」
源さんの言葉に頷き、「だって〜」とへにゃらと笑う。
「捕まったって言う子。もの凄くみたいから!」
「野次馬根性かよ……」
げんなりとした表情で平助が肩を落とした。本当に顔に出やすい子だよ。
「うふふ…それに、確認したい事があったしね」
「確認したい事…ですか」
「はい」
山南さんの呟きに頷く。取り出したのは星見をする時に使う水晶。
それを両手で包みこむように持ち、すぅーと息を吸い込んだ。
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