桜色舞う頃

□一話
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ねえ、ルック?

人って、そんなに軟じゃないって…そう思わなかった?






色が無くなるなら、私が染めてあげる


風が吹かないなら、私が吹かせてあげる


時間が止まるなら、私が動かしてあげる







―――ねえ、私はずっと君を見てたんだよ?







――あの頃からずっと



ずっと、ずっと…














だから、早く迎えに来てよ…






いつものように、迷惑そうな顔で「冬姫!」って名前を呼んで…






「仕方ないね」って苦笑いをして、仏頂面で手を差し伸べてよ…








――ねえ





―――――――――もういないって、ウソだよね…っ?










私はなんであの時、君の手を取らなかったのかなぁ…






掴んでいれば、君はここにいてくれたのに…















ねえルック、君はどんな声を、顔をしていたのかな?


もう、声も顔も思い出せなくなってきちゃったんだよ?






君の後始末を私がしてあげてるんだから…







ねえ?君はどんな性格をしていたっけ…?









君の怒った顔も、呆れた顔も、朧気で…






私の記憶から、君が消えていく…















―――君に、





―――逢いたいよ…っ!

















幻想



私の半身








この想いを、消さないで…っ!










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