紅き蝶 白き魂
□2話
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「「ただいま」」
キレイに揃ったユニゾンに同じ動作で、浅葱達は帰宅した。
今回の模試は身が入らなかったから結果は散々な筈だ。憂鬱な気分で二人同時に顔を上げると今までになく怖い顔をした母が仁王立ちしていた。
重い空気が室内を満たす。そんな中、何処か張り詰めた気配を纏い母が美朱に鋭い目を送った。
「美朱、浅葱。あなた達を待っていたのよ。…特に美朱、あなたって子は!
あなた、“男の子”と会っているのね!」
「え…?」
「母さん?」
「どうりで最近様子が変だと思ったら!」
ぐいぐいと美朱の腕を引き、母はリビングに向かっていく。浅葱は二人を追い掛けリビングに足を踏み入れた。
そこに広げられていたのは、可愛らしいピンクの表紙の日記帳だった。
それは紛れもなく“美朱の日記帳”。
そして引き出しにしまい、朽ちていく筈だった“浅葱の楽譜”。
それを見た二人は一瞬にして体を強張らせた。
「…日記帳…見たの?いくらお母さんでも酷いわ!」
「どっちが酷いの!中学生が親の目を盗んで男の事会って!しかも受験前に!」
「違うわ!これは――」
言い争う二人の脇をすり抜け、浅葱は震える手でテーブルの上に乱雑に置かれた楽譜を手に取った。
まさか、実の親に信用されていないとは思わなかった。
白い紙が震えでカサカサと軽い音をたてる。
これはずっと仕舞いこんでおくだけにしたかった。大切な大切な“想い出”は自分ひとりの中にあればよかった。
ただ溢れ出る想いを形にしただけのソレを抱き込み、涙で滲む目を美朱の日記に向けると『カッコイイ男の事会っちゃった』と書かれてあった。
これを読んで母は怒っているのだろう。その当事者たちは感情的になり言い争っている。
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