紅き蝶 白き魂

□3話
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電気をつけなくとも明るいのは都会ゆえか。



帰ってきた浅葱は母と顔を合わせづらく、逃げるように自分の部屋にいた。

薄いレースのカーテンから零れる明かりを見つめながら、妹の帰りを待つしかない自分を呪う。

帰ってきた姿のままベッドに倒れ込んだため、明日の制服は皺だらけになっているだろう。


取りとめもないことを思いつつ、揺れる視界を瞼で遮断させる。


(こんなこと今までなかったのに…)


確かに普通の双子よりお互いの痛みを共有していたが、今日はそれ以上だ。

今まで多少のことなら幾度となくあった。けれど、ここまで頻繁ではなかったはずだ。




まるで魂が繋がってしまったかのように『いたみ』に襲われる。



痛み、苦しみ、発熱。



ありとあらゆる苦痛の渦。それを耐えるように浅葱はぎゅっと己の身体を抱きしめた。

熱はさらに上がったようで、瞼を持ち上げる事も億劫だ。それに悪寒が走りだるくて動く事もままならない。


(……これは私の…熱?…それとも美朱、の…?)


曖昧な意識の中考えていた思考は霧散し、浅葱は沈むように意識を手放した。




―――――――――――――――――
――――――――――――




『ここから出してぇぇぇええ!!!』



―――――――ビクンッ!!



魂から絞り出される『声』に浅葱の身体が震え、彼女は緩慢に瞼を持ち上げ焦点の合わない瞳で宙を見つめ小さく唇を動かした。

その艶やかな唇から吐息と共に出された言葉は、冷たい空気にとける。



そして彼女は何事もなかったかのように、安らかな寝息を吐きだし再び眠りについたのだった。






どこかで誰かが嗤っている“声”が聞こえた気がした…。




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