紅き蝶 白き魂
□6話
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紅南国――四つの国のうちの南に位置するこの国は、常に春のような温暖な気候が特長の豊かな国だ。
国を治める皇帝は若くして帝位についたにも関わらず、たぐいまれな才知で政(まつりごと)を動かし民に慕われていた。
そんな皇帝のいる宮殿の南に位置する場所に、この国を守護する四神の一つ『朱雀』が祀られている廟がある。
金細工で精巧に造られた『朱雀』。
その前には果物などが供えられ、いかに敬われているのか窺えた。
そんな厳かな廟に、朱金の光が徐々に集まり何かを形成させていた。
ただの光の玉から形作られていくのは、一人の人間だった。
光がはぜ、"ソレ"は重力によって落ちていく。
ゆっくり
ゆっくりと……
光から現れた人間は朱金の光を仄かに纏わせ、朱雀像の前に横たわった。
黒髪に端正な造りの顔。
見慣れない造りの服は、柔らかい素材なのかフワフワとしている。
まるで人形のような『ソレ』に、供え物を運んでいた女官は驚愕の顔をし慌てて朱雀廟を駆け出していった。