紅き蝶 白き魂

□6話
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星宿が退出し、女官も下がらせた室(へや)に少女の息遣いと僅かに布擦れの音が響く。


先ほどきた医官に見せた診察結果は『風邪』。

風邪からくる高熱と脱水症状だと判明し、それからずっと付き添っている。



手を離せば儚く消えそうな少女から目が離せなかったのだ。


赤の他人の少女をここまで心配する必要はないのだが、どうしても離れることができなかった。



「あなた、私になにかしたの?」



汗を拭き取りながら、小さく呟く。

返事など返ってこないとは分かっているが、この奇妙な感覚の正体に戸惑う。


「早く治りなさい。あんたは誰なのかしら?」



そっと赤い頬を撫で、髪をすく。





少女の目尻から一筋の涙が流れた。



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