紅き蝶 白き魂

□9話
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暖かな微風をうけ、浅葱は窓の外に目を向けた。
鮮やかな花ばなが風に揺れ、微かに花の香りを運んでくれる。

それに心を和ませ、彼女は手にしていた書物を机の上に置き立ち上がると窓辺によった。

借りている薄手の衣がさらりと音をたる。


「……きれい」

「君に誉めて貰え光栄だな」

「え…?」

「気分は如何かな?朱雀廟の君」


自分の呟きにまさか返事を返す人がいたとは思わず、浅葱は口元に袖を当て振り向く。
長い黒髪に女のような容姿の男の人が部屋の入り口に立っていた。

その後ろにはこの部屋の主である柳宿と、女官の蓬優が控えている。
それに気づいた浅葱は居ずまいを正し深々とお辞儀をした。


「お初にお目にかかります、皇帝陛下。
貴方様の慈悲により、私(わたくし)を助けて頂きましてなんと礼を言っていいのか…ありがとうございます」

「いや、私は何もしていない。君を連れていたのも看病したのも柳宿だ。
礼は柳宿に言ってやってくれ」

「ほ、星宿様ぁ…っ」



星宿に言われ柳宿は嬉しそうに頬を染める。
浅葱は柳宿を見ると再度お辞儀をし、目を緩ませた。


「柳宿さんも、ありがとうございます」

「うふふ、いいのよ」


星宿に誉められ緩んだ頬を更に緩ませ、柳宿はパタパタと手を振るった。



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