紅き蝶 白き魂
□10話
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保護されて一週間がたち、この生活にも大分慣れてきた。
初めのうちは新しい環境になれようと、女官たちや柳宿にこの世界について聞いて回っていが、今は文字が読み書き出来るよう、柳宿に教えてもらっている。
漢字ばかりの本は読みにくく、一々聞くのは気が引けてしまうのだ。
それに文のやり取りも難しく、用がある度人を呼び出し口頭で用件を伝えなければならなかった。
それを柳宿に相談したところ、柳宿は快く引き受けてくれ、1日付きっきりで手習いに励んでいた。
―――――――
今日の手習いも終わり、浅葱の髪が気になっていた柳宿は戸惑う彼女を座らせ櫛を片手に浅葱の髪を一房掬いすいていく。
優雅な動作で髪をすく姿を鏡越しに見ながら、浅葱は柳宿に問いかけた。
「柳宿さん、楽しいですか?」
「ええ、。浅葱の髪って指通りがいいからずっとやっていたくなるわ」
柳宿は髪を一房掬うとサラサラと流していく。
流麗な音を楽しみながら、ただ惜しいのは髪が短いことね、と胸中で呟いた。
美朱は茶色混じりの髪だが、浅葱は目も髪も漆黒だった。
顔立ちも色彩も性格も自分達の巫女とは違う。それなのに何処と無く似ているのは血の繋がり故だろう。
「そうですか……」
他に返す言葉が見当たらず浅葱は言葉少な目に頷いた。
「よし、これで良いわ。星宿様から頂いたその衣装とバッチリ!さすが私ね!」
鏡に映る浅葱の姿を見ると柳宿は髪の出来映えに自賛した。
蒼色の薄い布を重ねた袖を持ち上げ、小首を傾げ浅葱は鏡に映る自分をマジマジと見る。
短い髪を上手く纏めてある。櫛で一纏めになった髪には豪勢な簪が一つ付けられ、首を傾げたさいシャラリと涼やかな音をたてた。
「柳宿さんって器用ですね」
「あら?そうかしら?うふふふ、ありがとう。
ねえ、浅葱。あなた髪伸ばす気ない?」
「…なんでですか?」
不意に聞かれた浅葱は、少し憂いを含んだ瞳で柳宿を見る。
柳宿は柔らかな笑みを浮かべ、「綺麗な髪なのだもの、伸ばすべきよ」と彼女の頭を撫でた。
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