桜色舞う頃
□第三話
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「もう一度聞く、君は此処に何をしているんだ」
「あは…。今日は天気が良いし、『星見(ほしみ)』をちょっと…」
「『星見』?」
「えーと…、別にここの人を襲おうとか思ってないんで、その手に持っているものを下げてくれたら嬉しいんですけど?」
「君が何をするのか分からないままで下げる事は出来ない」
……この人、新選組の一人なのかな?
―――う〜ん、真面目さんだねぇ。
「分かりました。じゃあ、そこで見ててください。
でも、初めに言っておきますけど、私の邪魔をしないで下さいね!」
そう言うと水晶を持ち上げ、ふうと軽く息を吹きかけてやる。
水晶は淡い青色に光りくるくると回り出した。
「…っ!これは!?」
後ろで息を飲む音が聞こえてきたけど、気にしないで続けることにした。
それを抱えていた桶の上に落とすと、水晶は沈まずに水面すれすれで浮く。
それを見つめながら私は意識を集中させた。
『――天に魅入られし星。天に見染められし星。定めを背負いし星』
くるくると回る水晶から青い光が零れ出す。
『――あまねく星々を魅了する星よ。汝、我に指針を示したまえ』
私の言葉が途切れた刹那、水晶は光を凝縮させ、一筋の光を水鏡に映し出した。
それは水面を描く様に文字を浮かび上がらせた。
英語に近い文体。でも、英語ではない文字を目で追いながら読んで行く。
「…え?マジ…」
「……何が書いてあるんだ?」
脇から覗く様に忍者さんが桶の中を見ている。
私は引き攣った顔でコテンと首を傾げて見せた。
「あは…。私、ここで何かを探さなきゃいけないらしいです」
「何か?…曖昧だな。もっと具体的な事をいってくれ」
「…だって、分からないんですもん。
探せってだけで、何を探すのか書いてないんですよ。無理です」
ほらと、そこを指させば忍者さんは呆れたように目元を細める。
あ、そうか。読めないんだっけ!
「『――探せ。闇から生れし力を用い、願いを叶えし力を用いろ。さすれば、汝が求めし答えの扉は開かれん』」
ね?と忍者さんを見れば、彼は何とも言い難い顔で桶を覗き込んでいた。
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