紅き蝶 白き魂

□7話
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月明かりがさす山の中腹に陣取り、最後になるかもしれない酒を注いでまわる後ろ姿を見つめていた。

最近まで思い悩み、詰めていたなど誰が思うだろうか。


「私」は穏やかな横顔を眺めながら、さきほど注がれたお酒を一口飲んだ。





辛い。
でも美味しい。




明日で全てに方がつく。

もう後がないことも、敗けしか残されていないことも皆気がついている。


気がついているけど、誰も逃げようなどとは思っていなかった。


だって……"彼"がいるから。


【誠の武士】を体現した"彼"……兄がいるから逃げようなんて誰も思わない。

死にたい訳じゃないけど、屈したくもない馬鹿な人間の集まりに苦笑をもらす。


「私」もそんな馬鹿者の仲間だから。



初めはただ兄の後ろを追いかけただけだった。

追いかけた先は修羅の道で、泣いて傷ついて…でも笑いあって。


血に濡れた日々の中に温かさがあった。

顔馴染みだった人は仲間となり、背中を預けあった。


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