□背後にはご注意を
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―――暖かい。
窓際の椅子に寄りかかって、静かに目を閉じてみた。
風に髪が揺られて…
引っ張られて…
…え?「引っ張られて」?
「木戸野。」
「…恭の字…。」
いつの間にか、後ろに空目が立っていた。
亜紀の髪を指で弄りながら。
「どうしたの、恭の字」
「いや。木戸野の髪が綺麗だったのでつい、な。」
…恥ずかしい台詞をにべもなく言ってのける空目に、顔を紅くしながら亜紀は言った。
「ありがと。」
「木戸野の方が綺麗だがな」
「………。」
顔に、一気に赤がさした。こんな顔、空目に見せられない。
フイッと横を向く亜紀。
「?どうした、木戸野。」
「何でもない。」
「顔が赤いが」
「何でもないッ!」
と言って振り向こうとした途端、後ろから抱き締められた。
「…亜紀」
名前で呼ばれて、体が跳ねる。
「好きだ。」
返事はもちろん、
「私も。」
…ドアの外では、入るに入れない俊也が不審者のごとくウロウロしていた。
(日下部、近藤…早く来てくれ!!)