□腕の中に
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・・・「灰かぶり」の事件から一段落して、今この町の〈ロッジ〉は平和そのものだった。

異形から救う為だったとはいえ、クラスメイトの杜塚眞衣子を殺したと言う事実は、なかなか蒼井の心の中から消えない。


「白野くん、紅茶でも飲むかい?」

「あ、頂きます」


遠まわしに隣に座るかいと進めてみたら、承諾してくれた。


「・・・ダージリンですか?」

「ああ。知り合いの喫茶店から貰ったんだ。」

「そうなんですか。美味しいです。」

「そう言ってあげたら、きっと喜ぶよ。」


他愛の無い日常会話。

〈騎士〉になった者にとって、すぐに壊れてしまう可能性のある日常。


それが、恐い。


・・・思わず手を伸ばして、彼を抱きしめた。


「・・・神狩屋さん?」

「――僕は、恐いよ。志弦もそうだけど、目の前に居る大切な人が居なくなってしまう事も、この日常が壊れる事も。僕は望んでない」


だから、みんなみんな。
この腕に、閉じ込めてしまいたい。


「神狩屋さん・・・」

蒼井も、同意するように目を閉じた。

この幸せな時間が、いつまでも続くように、祈りながら。
 

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