恋人は同居人
□キス練(雅弥)
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取引先のお嬢様の結婚披露宴に出席した帰り。
西園寺家に来てから、結婚披露宴には何度か出席しているが、何度見ても花嫁のウエディングドレスはキレイだと思うし、何度聞いても両親への手紙には泣かされてしまう。
そして案の定、帰りのリムジンの中で泣いている始末だ。
リムジンの中で――
「ひっく、ひっく…うぅ…」
「あぁ、もうわかったから泣きやめ」
ほらよ、と言ってハンカチを差し出してくれたのは、西園寺家の代表として一緒に出席していたマサヤくんだ。
「うぅ…だってぇ…」
マサヤくんから借りたハンカチで涙を拭くが、まだまだ止まりそうになかった。
「お前毎回泣いてんのか?」
「う、うん…」
「ったく、よく泣けるな。どこのどいつかよく知らない奴の結婚式なんだぜ?」
「そうかもしれないけど、女の子は結婚式に憧れてるから、何度見ても感動するんだよ」
ひっく、ひっくとなりながら必死に話すが、マサヤくんは理解できないみたい。
「お前さ。もしかして、あんな結婚式やりたいとか思ってないよな?」
「思ってるに決まってるじゃない!!」
「げぇっ!マジで?」
マサヤくんはあからさまに嫌な顔をしていた。
「オレはヤダね。別に披露宴とかやらなくてもいいし」
「えぇ!?ウエディングドレス着て、ケーキ入刀とかキャンドルサービスは?」
「絶対っヤダ」
「そんなぁ…」
私がショックを受けているのには理由があった。
こんな結婚式はやりたくないと言い切ったマサヤくんと私は、兄妹であり恋人同士なのだ。
少しは結婚について意識してきた頃だっただけに、マサヤくんの発言にはショックを隠せないでいる。
現実を見せられ、いつのまにか涙も枯れてしまっていた。
「ユウ兄くらいだろ、あんなことやって喜ぶの」
「そっか…。じゃあ、ユウジお兄ちゃんと結婚しようかなぁ」
「はぁ?なんでそうなんだよ」
「ユウジお兄ちゃんは私のこと好きだっていつも言ってくれるし〜優しいし〜カッコいいし〜」
わざとらしく言うと、意外にも予想していた反応とは逆の反応をしてきた。
「確かにそうかもな…。ユウ兄のほうが、お前に優しくしてやれるかも…」
ふっ、とさみしそうにうつむいたマサヤくん。
負けず嫌いのマサヤくんならてっきり反論するものだと思っていた。
「ヤ、ヤダな〜、冗談だよ?」
「お前がそれで幸せになるなら、オレは別に…」
「ちょっとマサヤく……」
名前を呼び掛けようとした時、にやっと笑ったマサヤくんの顔が一気に近付いてきた。
そしてそのまま…
チュッ
……っ!?
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