天下無双

花鳥風月・壱
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『見てください陸遜様!』

空は青く澄み渡り
太陽の光が燦々と降注いぐ

青々しくなびく芝に薄桃色の花びらがヒラヒラと舞っていた


私は春が一番好きだ
どの季節も四季折々の美しさを見せるけど、肌に感じる暖かさと色とりどりの花々を咲かす春が何より好き

今だって目の前に満開に咲き誇る桜の木がある
この薄桃色の花々は春の内でも数日しか見れない

儚くも力強く美しく咲く桜に自分はなんと小さき存在なのかを思い知らされたりもする

だけども穏やかな気持ちになれるこの季節が愛しい



舞い散る桜に見とれていると、ふいにふわりと草花の香りをのせた風が髪をかすめる

程なくして視界の端に自分よりも大きな手の平が映り思わず身をよじった


「髪についていましたよ。そのままでも可憐でしたが」


彼の手の平には先程吹いた風によって髪についたであろう桜の花びらがあった


(可憐って…)


陸遜からすれば何気ない一言なのかもしれないが、自分にはいささか刺激が過ぎるよう気がした

顔に熱が集まるのがよく分かる
きっと今、自分は誰にでも分かるくらい真っ赤なのだろう


彼は自分よりいくつか年上で最近では急に男らしくなった

何年か前までは暗くなるまで一緒に遊んでいたのに、今は勉学に励み、武芸の鍛練に勤しんでいるのだという


『これからはなかなか会えないのですね…』

「えぇ。この国のために死力を尽し支えるのが私の夢ですから」


そう決意を秘めた眼差しで話す陸遜

いつだって彼や兄は自分の先をゆく


いつか必ず追い付きたい
そして彼らの役に立ちたい


だからは私は今できることをやろう



『私も…もっともっと頑張って、近い未来必ず陸遜様や兄上の力になります!』

「ふふ…期待していますよ名無しさん」


そういって彼は目を細め、私の頭に温かい手の平をおいた












いつの日かの約束

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