黒い竜の物語
□第二話 来訪者
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夜明け前。
まだ薄暗いその部屋の扉が、勢いよく開け放たれた。
「黒竜っ!」
扉の向こうから、女が慌てた様子で部屋に駆け込んで来た。
「黒竜! ちょいと起きとくれよっ!」
「……ん〜……何だよ。こんな時間に……夜這い?」
「バカな事言ってんじゃないよっ! ほら、起きて!」
女はベッドに近寄ると、布団を剥いで黒竜の体を無理矢理起こす。
「だから……何だよぉ……一体……」
目を擦りながら上体を起こした黒竜は、突然パッと立ち上がる。
「……これは……」
女は、不安げな表情で口を開いた。
「なんだか街に見馴れない男が来てさ……あちこち壊して回ってるんだよ」
黒竜はベッドから跳ね降り、窓辺へと駆け寄る。
見ると、真っ白な炎が燃え盛り、街を照らし出していた。
「…………」
「このままじゃ、街が全部焼けちまうよ」
女の言葉を聞きながら、黙って街を見詰めていた黒竜の目の前で、巨大な炎の柱が立ち上がる。
「……あそこか……」
小さく呟くと黒竜は窓枠に足を掛け、
「おばちゃんはここに居な。外に出ちゃダメだぞ」
言われて、女は黒竜の背に声を掛けた。
「あ……アンタはどうするんだい!?」
黒竜は振り向き、笑顔で答える。
「もちろん。悪者を懲らしめに行くんだよ♪」
そう言って、黒竜は窓から飛び下りた。