白き鬼

□第1話 白き鬼
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その村は昔、突如現れた一匹の鬼によって壊滅的な打撃を受けた。

夜毎に現れるその鬼は、村人を喰い殺し女を浚っていく。

やがて鬼は一人の退魔師によって封じられるが、鬼を封じたとされる祠と鬼の伝説は、今なお村人の間で恐れられている――




ある日、その村で一人の女が子を産んだ。
その子供は産まれてからただの一度も声を上げなかった。その子供を見た女は、震える声音で呟く。

「……なんてこと……」

女は、子供が声を上げなかった事よりも、その子供の髪と眼の色を見て顔を両手で覆った。
その子供の髪の色は白。そして眼は、まるで血のような紅い色をしていた。

「……まさか……あの鬼の子が産まれるなんて……」

女は絶望していた。
自分には鬼の血が流れていたのだ。
かつて、この村を恐怖と絶望の淵に突き落とした――あの鬼の血が。

女はこの時まで自分に鬼の血が流れている事を知らなかった。

産まれた子供が女児であった場合、見た目は普通の人間と何ら変わりは無いが、男児の場合、必ず鬼の証である白い髪と紅い眼を持つ者が産まれたという。

鬼の血を引く者は母も子も処刑される。女は夜中、子供を布でくるんで抱き上げると、一人山へ向かった。

身も凍る様な寒い冬の夜。しんしんと雪が降る中、女はその子供を山へ捨てた。

子を捨て、村へ戻った女を待っていたのは、武器を構えた村人だった。
鬼の血を引く者だと知られた女は村人に殺された。
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