白き鬼
□第11話 目覚め
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もうどれ程の月日が経ったのか――
彼はそれを考えてみる気にもなれなかった。
そんな事は、考えても意味が無い。
暗く閉ざされた空間。
暑いのか寒いのか――自分が、上を向いているのか下を向いているのか――それさえ分からない。
だが、その場所に居る事を不快に思った事はなかった。
自分が愛しいと感じた女の中に居る事が出来て――何故不快に思う事があるだろう?
この檻は自分を縛り続けるが、それは同時に、彼女と自分を繋ぎ止める唯一のモノでもあった。
そこから出ようと――その力に抗った事はない。
自分がこれまで生きてきた時間の中で、ただ一度の――敗北。
一瞬だった。
本当に。
一瞬で彼は囚われた。
己の命と引き換えに、彼女は自分を抑え込んだ。
(……本当に……大した女だ)