白き鬼
□第12話 百年の時(前編)
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『鬼様〜! お酒ありました〜♪』
酒瓶を手に駆けてくる久遠に、鬼は手を挙げる。
『おお。よこせ』
『は〜い♪ どうぞ♪』
酒瓶を鬼に渡すと、久遠はキョロキョロと辺りを見回し、
『……それにしても……』
『ん?』
『綺麗さっぱり更地になりましたねぇ』
『そうだな』
鬼は酒を呷る。
口元を手の甲で拭い、
『何しろ百年ぶりだからな。手加減出来なんだ』
久遠の案内で降り立った村は、その姿を変えていた。
家は焼け落ち、辺りは一面焦土と化している。
『まぁしかし……ここまで物を壊すつもりではなかったが』
『いえっ! 先程の鬼様のお姿を見て、私は感動しました! やはり貴方様はこの地を統べるに相応しいお方です!』
『……ンな大袈裟な』
小さく呻いて、鬼は嘆息した。