白き鬼

□第5話 空の涙(前編)
2ページ/38ページ

「これで最後か」

斬影は刀に付いた血糊を振り払い、小さく呟いた。

「……数が増えたな……」

斬影は顔をしかめた。
彼の足元には、十数体の妖魔の死体が横たわっている。

斬影は妖魔を退治し、その妖魔の角や牙、翼等を売る事で生計を立てている。
妖魔の角や牙等は武具、あるいは薬の材料に用いられる。
勿論、どんな妖魔でも良いという訳ではなく――ある程度、妖としての力を持つ妖魔の物に限られるが。

使えそうな物とそうでない物を、慣れた手付きで選別していく。
ここ最近は妖魔を退治して欲しいとの依頼もあり、仕事が増えるのは良いのだが――何故だか妙な胸騒ぎがする。

「……気のせいならいいけどな」

斬影は立ち上がると、倒した妖魔を一瞥し――山を下りた。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ