白き鬼
□第5話 空の涙(前編)
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「これで最後か」
斬影は刀に付いた血糊を振り払い、小さく呟いた。
「……数が増えたな……」
斬影は顔をしかめた。
彼の足元には、十数体の妖魔の死体が横たわっている。
斬影は妖魔を退治し、その妖魔の角や牙、翼等を売る事で生計を立てている。
妖魔の角や牙等は武具、あるいは薬の材料に用いられる。
勿論、どんな妖魔でも良いという訳ではなく――ある程度、妖としての力を持つ妖魔の物に限られるが。
使えそうな物とそうでない物を、慣れた手付きで選別していく。
ここ最近は妖魔を退治して欲しいとの依頼もあり、仕事が増えるのは良いのだが――何故だか妙な胸騒ぎがする。
「……気のせいならいいけどな」
斬影は立ち上がると、倒した妖魔を一瞥し――山を下りた。