白き鬼

□第7話 邂逅(前編)
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大きな町だった。
様々な店が軒を連ね、大勢の人が行き交う大通りを、一人の青年が歩いていく。

白い髪に紅い瞳。
思わず振り返って見るほど、青年の顔は美しく整っている。

彼とすれ違う人の多くは、振り返った。
それは別に、彼の容姿に惹かれたからという訳ではない。
いや、そういう者も中にはいるが、大抵の人間はまずこう言う。

『何故こんな所に妖が』と。

正確に言えば、彼は妖ではなく、妖の血を引く人間だが、普通の人間からすれば、どちらも同じようなモノだった。
人外の力を持っている事に変わりはないのだから。

彼はその視線にも、言葉にも慣れていた。
昔からそうだ。
生まれた時から。
そして彼自身、普通の人間でない事は理解している。

人の多い場所はあまり好かない。
彼――大和は、無言で歩みを進めた。
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