白き鬼
□第12話 百年の時(前編)
2ページ/35ページ
久遠はうっとりとした表情を浮かべていたが、くるりと鬼の方へ向き直り、
『大袈裟ではありません。鬼様のお力があれば、この地から人間共を追い払えるハズです!』
キッパリと言ってくる。
『……それはどうかな。ま、ここら一帯を更地にするくらいは出来ようが……』
空になった酒瓶を投げ捨て、
『俺はそんな事をするつもりは無い。物を壊したり、人を怖がらせるのはあまり趣味ではないしな』
『鬼様……』
それを聞いた久遠が、ぽつりと呟く。
『……でもさっきちょっと楽しそうでした』
その瞬間。
ゴッ!――
久遠の頭上に鬼の踵が落ちる。
『痛いっ! 痛いっ! 痛いっ!』
頭を抱えてのたうち回る久遠に、鬼が低い声音で告げた。
『……次は割るぞ。その頭』