王子様と変態ちゃん
□仮
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赤根はメルと奏との間で気持ちが揺らいでいた。メルのことはもちろん好きだが、元カノの奏の事が忘れられない。やっと忘れられそうになっていたところに奏から“まだ雄太の事が好き”と告白されてしまう。
まただーーー…
先輩考え事してる。一昨日から様子がおかしい。話し掛けると笑ってくれるけど、耳に入ってない。笑顔もぎこちない…。
黙り込んでしまう。
先輩の表情がふと変わる。ハッとしたように目を開き、何かに目を奪われたように窓から下を眺めていた。
その視線の先を見なければ良かったと思う……分かっていた。先輩の様子がおかしくなった理由。
(奏先輩…………)
苦しそうに顔を伏せる先輩。ふと、奏先輩がこちらを見上げる。私を静かに見つめる彼女に心臓を鷲掴みされたような感覚に陥る。
「ーーーーーー…っ」
私達の沈黙の間を縫って、しんしんと今年初めての雪が降りだした。
“どうしたらいつものように笑ってくれますか?”
声にならない問いは静かに雪に埋れて行った。