灰色ロータス
□第一夜…失踪していたエクソシスト
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断崖絶壁の上に聳えるは黒の教団。
その崖の下に、二つの影があった。
『今日は雨が降りそうですねー。どうですかー?スクアーロ』
月明かりに煌めく長い銀髪を風になびかせ、無気力な喋り方で隣に浮いている鮫に話し掛けるのは、黒の教団エクソシストの団服を着た中性的な顔立ちの人物。
スクアーロと呼ばれた鮫はうなずき、その人物の周りをじゃれる様にクルリと泳ぎ回る。
『そうですかー。君が言うなら降るんでしょうねー』
憂鬱そうに呟いて、少し長めの溜め息をつく。
そして五秒程沈黙すると、スクアーロの方を向いて言った。
『仕方ないですよねー。今夜はこの辺に泊まりますー。どっか泊まる所ー泊まる所ー…』
ぐるりと周囲を見回すその人物に、近づいて来る静かな足音。
「……?」
足音の主は、長い黒髪を高いところで一つに結った、東洋系の顔立ちをした青年だった。
彼もまたエクソシストの団服を着ている。
青年は前方に立つ銀色の人物に視線を向け、眉間にシワを寄せる。
「(…何だあいつ。顔は見えねぇが……エクソシストか?)」
その青年――神田ユウは、その人物の元へと歩んでいった。
『泊まる所ー泊まる所ー』
「おい」
『どっか無いですかねー』
「……おい」
『あー、でも今一文無しでしたー』
「(泊まれねぇだろそれ) …おい、そこのお前」
『仕方ありませんねー。捨て子になりきって拾って貰いましょーか』
「(イラッ)おいッ!!!」
先程から何度も呼び掛けているのに、中々返事をしない相手に何かが切れた神田は、遂に声を荒げた。
『何ですかー、うるさいですねー。
咬み殺しちゃって下さいスクアーロー』
「ちょっと待て!!」
『何ですかー?うるさいって言って……………あれ、貴方誰ですかー?』
「上等じゃねぇか…」
神田が腰にあるイノセンス、六幻に手を掛けたのを視界に入れた人物は、「え゙」と一言声を漏らし固まる。
『いや、ちょ、タンマですー』
「六幻抜刀!!」
『え゙、……おーい?』
ドギャーンッッッ!!!!!!
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