ぼかろ小説A

□ごめんね
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ぼくは、きみのことが大好きだった。

子供の頃に交わした、幼い約束。

それを、ずっと信じていたんだ。



その気持ちはずっと変わらない、と、僕自身も思っていたよ。

…でもまさか、変わるなんて。


きみの一挙一動が、どうしようもなくかわいく感じてしょうがなかった。



きみが笑う。

その天使のような笑顔に目を奪われてしまう。

きみが泣く。

思わずきみのそばにいて、きみを優しく抱きしめてあげたくなる。

きみが喜ぶ。

それを見るだけで、ぼくも喜びを隠せなくなる。

…ぼくはきみのことを、あのときよりもずっとずっと、好きになってしまったんだ。



…この気持ちをきみに伝えたかった。

でも、勇気が出なくて。

きみはきっと、あのときの約束を覚えていないから。

ぼくのことを、弟や親友、くらいにしか思ってないだろうから…。

そう悩んでいる間にも、

ぼくの心の中でのきみの存在は大きくなっていく。



きみの近くにいたら、どうにかなってしまいそうで。

きっと、歯止めがきかなくなってしまいそうで。


ぼくは、半ばきみを避けるようになってしまったんだ。



きみが話しかけてくると、心臓が跳ねる。

動揺を隠すのに精一杯で、きみに返事をすることが出来なくて。

そんな悲しい顔をしないでよ。

ぼくは、きみの笑顔を見たいんだから。

謝りたいのに、言葉がでない。

このままじゃ、きみに嫌われちゃうかもしれない…!




ごく最近になって。

きみの笑顔が消えた。


部屋の中。

横目でそっときみを見ると

きみと目があった。

「…レン、」

話しかけられた。

でも何も返せない。


動揺を隠すのが精一杯。

「………。」

沈黙が辛い。

ぼくは走るように、部屋から飛び出してしまった。

どうして、こんなことを。

そのぼくの動作のひとつひとつがきみを傷つけてしまっていたのだと、

気付いたのは大分後だった。




台所に入ると、倒れたきみの姿が目に入った。

「…リンっ!」

駆け寄ると、

きみの右手には包丁が。

きみの左手には


「…ぼくの、ヘッドフォン…?」

…確か、数時間前からなかった。

きっとどこかに置き忘れたんだとばかり…っ!

「…リン…っ!」

まさか…きみもぼくのことを…?

あの約束を、忘れてなかったと…っ!?

「リンっ!!」

もう動いてくれない。

もうきみの笑顔は見られない。

気持ちを伝えることも、もう…




……リン。

ごめんね。

きみを、ひとりにしていたぼくを許して。



ぼくも今、いくよ。

きみのもとに。


ずっと、いっしょ…だから…ね…。



ごめんね

(レンだーいすき。)
(リンのことが好きだから。)

あとがき

レン視点です。

予想は出来ていたのではないでしょうか。

こちらは、リンがリン自身を壊した場合、です。

…レンの口調に違和感。

…気が向いたら、書き直すかもです。

読んでくださって、ありがとうございましたっ!

7/28 凍都









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