ぼかろ小説A

□歌えない歌姫。
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「〜〜♪」

今日も私は歌を歌う。

モニターの向こうのあなたのために。

上手に歌えば、あなたが笑ってくれるから。

あなたの笑顔を見たくて、

あなたの喜ぶ顔を見たくて、

今日も私は歌を歌う。



「〜♪…∼―∼∼…∼――∼∼∼…!?」

急に、声が出なくなった。

喉が痛い。

どうして。…どうして…!?

無理に声を出そうとすると、

喉に激痛が走る。

(ます、たー…)

「…あれ?どうしたんだろ。」

マスターが、いろいろな設定をいじる。

でも、喉が痛くて、声が出なくて。

「…壊れた、のかな。」

壊れ、た…?

私は、壊れたの…?

認めたくない。

私はまだ、歌え――

「…∼∼∼―∼∼∼……」

…歌いたい。

歌いたいです、マスター。

私は、もっと…っ!

「…しょうがない、か。」

マスター?

ます、



アンインストール。

急にそんな言葉が、頭の中に浮かんだ。


マスターっ!?


私はアンインストールされてしまう。

それがわかった。

マスターの少し困った顔。


マスター、まだ、待って。

待ってください…っ!

(∼∼∼…)


私の想いを乗せて、

あなたに届けてくれていたメロディはもう、出てくれない。


マスターに、私の想いを…。


アンインストールが始まった。

私の体はさらさらと、砂のように溶けて消えていく。


最後に…最後にあなたに伝えたい。

――ありがとう。

私をあなたの家の、あなたのパソコンにインストールしてくれて。

たくさんの歌を歌わせてくれて、

アりがとう…。



――あリガとウ。



――大好き…マス、タ…。





歌えない歌姫。

(ありがとう…)

(…大好き。)





あとがき

消失です。

ついに書いてしまいました…っ!

題名がふと浮かんできて、

気付いたら消失ルートに。

マスミクのつもりでした。

でもなんだかすっきりしない。

またいつか、違う消失を書きます。

…多分。

8/21 凍都









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