ぼかろ小説

□やんでれら
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ヤンデレラが16歳になった日、お城で王子様の16回目の誕生パーティーが開かれました。

そのパーティーは、王子様の結婚相手を決めるためのパーティーでもあったため、

国中から若い娘たちが集まりました。

もちろん、継母とその娘たちも例外ではありませんでした。

ヤンデレラにパーティーに行く準備の手伝いをさせて、

ヤンデレラは家で家事の続きをするように言い付けて、いそいそと出掛けていきました。

誰もいなくなったあと、ヤンデレラはちらりと手首の傷を見て思いました。

わたしは自ら命を絶つときがくる。

…ならば死ぬ前に、わたしと正反対の生活をしている、誕生日も年も同じの王子様を一目見たい…。

でもそれはかなわぬことでした。

ヤンデレラには着る服も、なにもありません。

ヤンデレラの家はお城から遠かったので、今から走っても間に合わないでしょう。

靴だって、ぼろぼろです。

「…無理…なのかしら…。」

小さく呟くと、

「…無理じゃないわ。」

どこからともなく、声が聞こえてきました。

「…誰…?」

辺りを見回しますが、誰も見当たりません。

「わたしの魔法で、あなたをパーティーに連れていってあげる。」

家の中に声だけが響きます。

「…えいっ!」

掛け声がして、一瞬視界が真っ白になりました。

するとどうでしょう。

ヤンデレラは綺麗なドレスを身にまとい、透き通ったガラスの靴を履いていました。

髪も綺麗に整えられ、ヤンデレラはとても美しい姿で立っていました。

「…わぁ…。」

ヤンデレラは少しだけ嬉しくなって、久しぶりに、にこ、と微笑みました。

「とっても、似合っているわ。…明るかったころのあなたを、思い出して…。」

「…ぇ?」

「気をつけて。わたしの魔法は、0時の鐘が鳴り終わったら解けてしまうから…。」

「……わかり、ました…。…あなたは…、」

「いってらっしゃいっ、…リ、」

「………!!」

白い光に包まれて、なにも見えなくなりました。









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