ぼかろ小説A

□大っきらい、でもありがと
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「レン?…誰それ。」

「ね、ネル…知らないの?」

「知らないから聞いてるんじゃない。」

「…ボーカロイドだよ。」

「…ま、それくらいはわかるけど。」

「……えっと…ミクさんの次のボーカロイドだよ、双子の…。」

「ふーん。」

「…ネルぅ…。」


あの時はほとんど知らなくて、

ハクの話を聞いても、正直、あんま興味はなかった。

鏡音レン。

…あたしたち亜種にとって、

オリジナルは敵。

だから、その鏡音レンも、敵だ。

そう思って、過ごしてきた。


ある日仕事場で。

あたしたちは滅多に呼ばれることはないけど、

今日は仕事があった。

だから、スタジオに行った。

歩きながら携帯をいじる。

ハクには危ないからやめなよ、と注意されているけど、

あたしはただ歩くだけなんて無駄な時間は過ごしたくない。

『…あ、こんにちは。』

その時に聞こえた挨拶。

廊下ですれ違っただけだったけど。

あたしが顔をあげたときに目に映った彼の笑顔は、

今でも思い出せる。

…信じたくないけど、あたし…。

ううん、なんでもないんだ。

なんでもない。

なんでもないったら。

それから、何をしてても彼のその笑顔が浮かぶ。

彼のことを考えてしまう。

…だから、違うっ!

あたしがレンくんを好…、

「…だぁぁっ!だから違うって!」

「…ね、ネルっ?…急に、どうしたの…。」

「……な、なんでもない。」

「…そう。」

そう、なんでもない。

「…そういえばネル、レンさんが…、…あ。」

「なによ。どうしたっていうの。」

「…だって…ネル、オリジナルの話すると…怒るし…。」

「た、確かにそうだけど、…お、教えてよ。どうしたの。」

「…うん…いいけど、…わかった。」









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