APH小説

□きっとあなたは単純に
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「驚きましたよ、」

そう言いながら、髪からぽたぽたと滴を垂らしているアメリカさんにタオルを手渡す。

ありがとう、と言って受け取るアメリカさん。

「…そうだろ!?日本を驚かせようと思ったんだぞ!」

まるで子供のような、…とは言っても私よりは余程若いですが…、

屈託のない笑顔でアメリカさんが笑う。

「そうだったのですか…」

つられて私も笑顔になってしまう。

この人には、不思議な力があるような気がします。

アメリカさんの近くにいるだけで不思議と笑顔になってしまう、そんな力が。

確かに驚かされました、そう言ってまた二人で笑う。


「…上がって行かれませんか?」

当然、いつもどおりなら上がっていかれるものだとばかり思っていましたが。

「…今日は、……今日は、日本を驚かせにだけ来たんだぞ!」

急に声のトーンが低くなったかと思えば、

急に明るく、笑顔になって言った。

「…そう、ですか。アメリカさんも、忙しいのでしたね…。」

「そうなんだぞ!なんたって、ヒーローだからね!」

「…ふふ、そうですね。」

場の雰囲気がまた明るくなって、

ほっと胸をなでおろしたのも束の間。

「じゃ、俺はそろそろ行くんだぞ。」

もう、行ってしまうのですか。

もう少し…、もう少しだけでも…!


「…日本?」

「……え?」

私に背を向けたアメリカさんが振り返る。

見れば、私はアメリカさんの袖の端を掴んでしまっていて…!

「……あ、…す、すみませんっ!」

慌てて手を離す。

「どうかしたのかい?…君らしくないぞ。」

ごめんなさい、と小さくなってもう一度謝る。

別に謝らなくてもいいんだぞ、と笑うアメリカさん。

…自分でも、どうしてそんなことをしたのか。

ただ、何の根拠も無いけれど、

今この手を離したらアメリカさんが私から離れて行ってしまう、

…そんな気がしたのです。









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