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□朱と黒
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高橋からの連絡で、一同は胸を撫で下ろした。
大事には至らないそうだ。
須田や綾瀬は、メイド(高橋)の代わりに紅茶を淹れて、各々が聞きたいことを直也にぶつけた。


「知り合いなんだよね?」

「知り合いなんだよね?」


双子は、男との因果関係から聞き出した。
直也は短く「あぁ」と答えたっきり何も言わない。

次に福山が思ったことを直也に聞いた。


「族に入ってたんだな?」

「…昔の話だ」


間が空いたが、ちゃんと答えてくれる直也。
綾瀬は、直也の大体を知っているから聞かない。
須田も、聞いても意味がないと判断しているから聞かない。
駿介は完全に怯えてるので論外だ。

羽田野は、色々訪ねたいところだったが一番聞きたいことを直也に聞く。


「なんで総長なのに、チームを解散しなかったの?」


解散していれば、あの人は怪我をしなかった。
そう言いたいらしい。

直也は、触れてほしくないような表情をし、リビングから出ていった。
一人にしておけない、須田は直感的にそう思い、後についていった。
 









『直也』

「テメェも何か聞きてぇのか」

『別に。直也から話してくれないなら興味ない……でも、来た』

「たまにワケわからねぇよ、お前」

『僕の長所だね』

「短所の間違いだろ……ハァ」


最後にため息を吐いた直也。
心外だとばかりに頬を膨らませ、むくれる須田。
最終的に、おかしな雰囲気になったと気付いた直也は、嘲笑を浮かべた。


「……お前といると…」

『ん』

「…調子が狂うぜ……」




そうだな。


他人事のように須田は言い、直也を見つめた。
直也も、須田を見つめ返す。

互いが互いを見つめて、沈黙を部屋中に振り撒く様は、恋人同士のようだ。




『心配か?』

「当たり前だろ…元仲間なんだし…」

『直也は人一倍優しくて…強いから、心配』

「……強かねぇよ」

『…直也?』

「よぇぇから、あんなことに……とにかく、もう思い出させるような事すんな。過去とか、諸々。お前を嫌いにはなりたくねぇんだから」




告白めいたその言葉は、鈍感な須田には届かなかった。
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