裏会

□文化祭
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『はぁ…メンドクサ…。』

時音は長〜い溜息を吐きながら、トボトボと夕陽の当たる帰り道を歩いていた。

『時音ーっ、待って待って。』

そんな時音とは対照的に、元気な足音と共に、良守の能天気な声が背後から真っ直ぐ此方に向かってきた。

『………っハァー…。』

ブルーな気分の時音は、ついついイラっとしてしまい、眉がヒクッと引きつった。

『時音ー、なんで先帰っちゃうんだよー…。』

憮然と話しかける良守を見もしないで、前だけ向いてスタスタ歩く。

『アンタ、忙しそうにしてたじゃない。』

そう。ちゃんと教室までは行ったのだ。
そこまでしたんだから、文句を言われる筋合いはない。

『ちょっと待っててくれてもいんじゃね…?』

『煩い。アタシだってヒマじゃないの。やんなきゃいけないことだってあんの。』

ああ。ダメだ。
こんなこと言いたいんじゃない。
でも…止まらない。

時音はピタリと足を止め、ギッと良守を睨み付けるなり、ピンとキツい声で言い放った。

『アンタがクラスの子達と、イチャイチャしてんの見てる暇なんて、全く、全然っ、毛頭っ、無いのっ!!』

けっこうな剣幕で言われた良守は、一瞬、驚いて目を見開いたが、すぐに嬉しそうにニヘラと笑んだ。

『あはっ。時音、ヤキモチやいてくれたの?』

ビク〜ンと時音の肩が跳ね上がり、カァッと耳朶が朱に染まる。

『やっ//ちがっ//』

可愛い嫉妬が愛おし過ぎて、ギュウっと時音を抱き締めた良守は、スリスリとその頬に頬摺りした。

『あーもー、時音、ごめんな?でもあんなん、ただの愛想笑いだよ?』

すっぽりアタシを抱きすくめた良守が、甘〜い声で囁いてくる。

『愛してるよ、時音。』

時音は、ちょっとウザい顔を作るものの、内心は、その低い甘い声に腰が抜けそうになっていた。

『もうっ//こんなトコで抱きつかないでっ//バカっ!!恥ずかしいよっ//』

ちょっと心臓がバクバクしだして、それを隠したい時音は、慌てて良守を突き飛ばし、またスタスタと歩を進める。

(もうっ//愛してるトカ、なんで恥ずかしげもなく言えるのかしらっ//やっぱコイツは恐ろしいほどのバカだっ!!)

そんな彼女が分かり易過ぎて、ぷっと小さく吹き出した良守は、ニコニコしながら追い掛けた。

『あっは、ごめんって。
場所なんて忘れるほど、時音が大好きだってコトじゃん。』


そんなの…わかってる。

あんなの愛想笑い以外なにものでもないってコトも…。

でも、あんまり優しげにニコニコしながら、されるがままになってたりなんかしてるから…。


最近、コイツは急にモテだした。

体格も良くなったし、外見にも気を使いだした。
素直で優しい性格や、落ち着きを纏った穏やかな雰囲気がモテる要因になっているらしい…とマドカが言っていた。



(もう…イヤなんだもん…。)

誰にでも平等に向けられる、素直で優しい良守の笑顔は、アタシにだけ向けて欲しいトカ…
良守のその温かい優しさを、アタシ1人に向けて欲しいなんて…そんなのただの我が儘だ…。

ハァー…と切なげに溜息を吐いた途端、良守はスゴい力で私を掴んで、路地裏に連れ込んだ。

『ひっ…やっ…ちょっ…な、なにっ!?』

塀に背中をダンっと乱暴に押し付けられて、私はその痛みに顔をしかめた。

『いっ!!なっ、良守っ!?』

ギラッと瞳を揺るがせた良守から、思いっきり激しいキスをされた。

『んぅっ!!?んっ、んんーーーっ…!!』

息が出来ないほど、
口内いっぱいに舌を蹂躙させて、良守の蜜がタラタラと注ぎ込まれる。

『んんっ…っく、んー…。』

コクンと嚥下したら、チュウっと痛いほど舌を吸われて唇が離れていった。

『はぁっ、はぁっ…も…、いきなり…なにす…のよー…。』

息も切れ切れに良守に文句を言って、苦しさからきた涙が溜まった瞳をキッとキツくして睨み付けた。

『お前が俺を煽るようなコト言うからだろ?』

『は?』

『…俺さ、本気で全力の笑顔と優しさは、お前にしか向けてないぞ。』

『へっ!?』

も、もしかしてっ…

『こっ//声に出てたっ!?』

『そりゃあもう、ハッキリと…。』

ウンウンと頷く良守に、カァーッと盛大に羞恥が吹き上げた。

良守はそんな可愛い時音を、ギュウっと強く抱き締めて、甘い声で囁いた。

『あーもー。時音、エッチしよ?本気で全力の愛をみせてあげるよ。』

『も…バカ…//アンタはすぐソレなんだから…。』

『でも、イヤじゃないでしょ?時音はこんな俺が大好きなんだよね?』

『……アンタのその訳の分かんない自信はムカつく…。』

『ふふっ。まぁまぁ〜』

ヒョイとお姫様抱っこした良守は、急いで家路についたのだった。
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