裏会

□文化祭
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ふと目を覚ますと、すっかり辺りは夜闇に包まれていた。

時音はハッと飛び起きて、腰の鈍痛に顔をしかめた。

『いっ…もうっ、良守のバカっ。』

てかヤバい、いつの間にか寝ちゃってたんだ…。

…いや、気絶?

先ほどまでの行為がありありと蘇ってきて、時音は羞恥の熱が吹き上げた。

と、部屋の襖がスッと開いて、アタシをこんな目に遭わせた張本人がヒョッコリ顔を出した。

『時音〜、起きた?』

『良守〜…。』

呑気な声に、思わずギッと睨みつけたら、良守はタジッと僅かに後退った。

『良守、ちょっと此処に座りなさい。』

手のひらでパンパンと畳を叩きながら、低い声で言うと、良守はますます逃げ腰になる。

『えっ…、ヤダ…時音、怖い〜…。』

『いいから来な。』

『ヤダ。』

『良守っ!!』

言うが早いか、時音は念糸でサッサと良守を捕らえ、自分の元に引っ張り寄せた。

『ひぇぇぇー…っ!!』

素っ頓狂な良守の叫びに、つい笑ってしまった。

『ぷ、別に取って食いはしないわよ。』

『へ?怒ってんじゃないの?』

『あはっ、ナニその情けない顔は〜。』

ポカンと間抜けな顔をする良守は、かなり可笑しかった。

『怒るのは後にしてあげる。アンタの働きようによっちゃ、許してあげるよ?』

良守の顔が怪訝に歪んで首を傾げていく。

『良守、裁縫は得意?』

『は?』

『アンタ器用だから得意そうよねぇ?』

『まぁ…得意…ではないけど…普通程度に…。』

満足気に頷きながら、ニッコリ微笑む彼女は、本当に花のように綺麗だった。


───────────


明日から学園祭が執り行われる。

時音のクラスでは、在り来たりだが喫茶店を催すことになった。

女子はウェイトレスなのだが、揃いの服を自作で作らねばならなくなったのだ。

裁縫トカ、細々した作業が大っ嫌いな時音は、今日まで手を付けずに来てしまい、焦りに焦っていた。


ヤバい。
こんなん、今日中なんかに出来るわけないじゃない〜。
つかメンドクサイ〜!!
あっ、そーだ。
こーゆー時こそ、器用な彼氏に頼ればいいんだ。

そう思って、わざわざ教室まで迎えに行ってやったのに、当の彼氏はクラスの女子とイチャイチャしてて…。


『…マテこら。イチャイチャってお前…。』

『してたじゃない。フンッ。甘〜い声で名前呼ばれてベタベタ触られちゃってさ。
オマケに嬉しそうにヘラヘラしちゃって、バっカみたい。』

プィーっと横を向いた可愛い時音を、良守は膝に乗せて抱き寄せる。

『ふふ。かーわい〜。』

『いーやぁー…』

チュッと額にキスをして、ジタバタと暴れる時音を抱きすくめる。

『愛してるよ、時音。不安にさせて、ごめんね?』

頬をスリスリと触れあわせてきて、なんだかちょっと恥ずかしい。

『しっ…知らない//』

熱くなった顔を隠すために、良守の首筋にグリグリと押し付けた。
その仕草がまた可愛くて、良守はだらしなく頬が緩みきってニヤニヤしてしまった。

『んはー、かわい。
とにかくさ、お前の服を縫えばいいんだな?』

『うん…。』

『んじゃ布、出して?』

『…いいの?』

パァッと目を輝かせて、顔を上げた時音に、良守はニッコリと微笑んだ。

『いいよ。それくらい、簡単なコトじゃん。そんなんでさっきのん許してくれんなら、易い易い〜。』

良かった〜。
と、ホッと胸をなで下ろし、時音は鞄から布を取り出した。

『これなんだけど…。』

すると良守の眉間がキュッと寄って、布を見たまま黙り込んでしまった。

(えっ?なに?なんで黙んの?)

もしや出来ないとか言われるのか?

…と思っていたら良守は

深〜い深〜い
長〜い長〜い
溜息を吐いた。

そして、何やら呆れきったような顔を遠慮なく私に向けてきた。

『…お前さ、コレ…この型に裁ったのはダレ?』

『え…、クラスの実行委員の子だけど?』

『…じゃあ、型紙から切り取られた布を、お前は渡されたワケだな?』

『……そうだけど?』

なによ?
なんなのよ?
何が言いたいのよ?

『ハァ…。お前こんなん、ただ縫うだけじゃんか。
何がメンドクサいんだよ。
意味わかんねーよ。』

ムッ…。
なにそのバカにしたような口調は。

『お前さぁ、ココまで親切にしてもらってて、メンドクサいなんて言っちゃダメだよ。』

なっ…//
え、えらそーに…

『あっ。ナニその顔?
まぁ、良いけどさ。
それにしても…ぷぷっ。お前、今日俺に貸し作ったのラッキーだったなぁ。』

『なっ//アンタねぇーっ!!』

その嘲笑じみた良守の笑みに、思い切りカッチーンとキタが…。

『なんだよ。
いいのか?』

チロ〜と流し見てくる良守には…。

『う…。よろしくお願いします…。』

今日は逆らっちゃいけないような気がした…。

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