宝物

□ターゲット
6ページ/8ページ


それから1週間ほどが経ったある日。

零は、あの日借りたスーツを届けるべく、Quintetの務めるケーキ屋の近くをうろついていた。
表の世界のリヴリー達が、幸せそうに道を行き交う中で零は、少し気が気でない様子である。別の言い方をすれば、慣れていない。といったところだろうか。

零はあの日以来、命令を受けた仕事をする以外の時はQuintetの事を考えていた。
彼の事を考える度、思う度、顔は真っ赤に染まる。
「零?」
悶々と考え事をしていた零の前に、仕事着姿のQuintetが現れたのだ。
「あ、えっと・・・これ、返しに来たんだ。あと、仕事終わってからでいいから、聞いてほしいことがあるんだけど、いいか?」
「零を待たせるのは悪いですね・・・少し待っていただけますか?」

零が首を縦に振ると、Quintetは店の中へ戻り、あの日と同じ色のスーツを羽織り、長い黒のマフラーをつけ、すぐに出てきた。
そして、零はQuintetに借りたままになっていた上着の入っている袋を渡した。
「コレ、あの時のやつ。」
「クリーニングして頂いたんですか?ありがとうございます。」
「いや、それほどでも。」と零は呟き、
「そ、そうだった。話があるんだよ、聞いてくれないか・・・?」

あの日、Quintetと手合せした場所へ向かった。

そこへ着くとやはり、人の気配は全くせず、今から話すことを誰にも邪魔されずいい場所だと零は意気込んだ。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ