学舎

□指輪大戦線
3ページ/4ページ

「かっ、神楽ちゃん…」
「なにアルか、銀ちゃん?」
レストランの入口に置いてあるメニューブックの前で俺は顔中に嫌な汗をかいていた。
予想外の展開だ。
(何なんだァァ!!このボッタクリレストランンン!!)
値段が高いだろうということは予想していたが、予想外の高さだ。
こんなところで飯を食ったら、1ヶ月分の食費と変らない金額を取られてしまう。
(いやいや、いくらなんでもコレはねーよ!!)
「か、神楽はこーゆーところで食べるのと、その辺の焼肉食い放題行くのとどっちがいい?いや、別に銀さんはどっちでもいーんだけどー!!やっぱり、誘ったのは銀さんだし、神楽ちゃんの意見を尊重した方がいいかなーって!!」
「マジでか!?焼肉食べ放題連れて行ってくれるアルか!!」
分かって言ったことではあるが、異常なまでの食い付きだ。
作戦は失敗してしまうが、なりふり構ってる値段じゃない、このボッタクリレストランは。
「じゃあ、焼肉食い放題に決定ー!!そうと決まれば、とっとと行くぞ、神楽!!」
「ウン!!」
早々とその場を去って行く。
(ちっ。作戦Aは失敗か。だが、こんな時の為に、俺にはまだ作戦Bがある!!)
「焼肉〜」っと作詞作曲・神楽な歌を歌っている神楽の後ろを歩きながら、俺は次のプロポーズ計画を頭の中で反芻した。


「ハァ、お腹いっぱいネ!!」
「お前、あれは食い過ぎだろ…」
最終的に焼肉屋で、店員に「もう勘弁してくれ」と泣きながら懇願された。
ある程度満足した神楽を連れ、俺達は公園を散歩中だ。
作戦Aが失敗し、作戦Bの方を決行するため、タイミングを見計らう。
(夜景は無理だったが、夜の公園ならムードもある…)
はずだった。
「ねっ、ねぇ、銀ちゃん…」
神楽が急に真っ赤な顔で俺の服の裾を引っ張ってきた。
その理由は俺にもよく分かっている。
「この公園、なんか変ネ…」
「う、うん。俺もそう思う。」
至る所で見られるカップルの激しいキス。
あまつさえ、あらぬ妖艶な女の声と水音までが聞こえてきた。
(ありえねェェ!!!!少しは人目を阻みやがれ!!!!俺だったらもっと上手くやってやるぞ!!)
俺だったら、例え場所が外であろうと、神楽のそんな顔や声を他の見せないし、聞かせない。
(って、そーじゃなくて!!)
ギュッとしがみついてくる神楽は、まるで怖い物を見ているようで可哀相になってきた。
(これじゃプロポーズどころじゃねーよ!!)
「神楽、場所変えるぞ!!」
「う、ウン!!」
神楽の手をギュッと握ると、俺と神楽は公園を抜けるため、全力で走って行った。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ