学舎

□理由を聞かせて
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最近は飲みに行く回数もめっきり減った。
ノロノロやっていた仕事も早く終わらせ、なるべく早く家に帰る。
気持ちはすっかり新婚生活だ。
「一緒に暮らさねぇか、神楽。」
そう言った俺に神楽はこれでもかという程頷いた。
そんなに俺の部屋も広い方ではないが、2人で暮らすには何の問題もないくらいの広さはある。
家事は当番制。
夕飯の準備だけは帰る時間の都合上、神楽が用意することが多かった。
今日の夕飯は何だろうかと考えるだけでも楽しかった。
20数年の人生で家族と呼べる人がいたことはほんの僅かな時間しかなかったから、家で誰かが待ってくれているということだけでも、俺には大きな幸せだ。
「早く卒業式にならねーかなー。」
神楽が高校を卒業すれば、本当の家族になって、きっとそのうちそれはどんどん増えていくのに…。
「まぁ、焦ることはねェよな。それに、まだ2人の生活も満喫してーし。」
神楽が心配してくれるから、安全運転手でスクーターで家に戻る。
家に着き、玄関前に立つと、家の中から夕飯のいい匂いがしてきた。
「ただいま〜。」
扉を開けると…
「………おかえりアル…。」
そこは雪国………じゃなかった、不機嫌な神楽がいた。
でも、ある意味雪が降りそうな冷たい空気を放っている。
「えーっと……かぐー…」
「夕飯、できてるから勝手に食べるヨロシ。私はお風呂入って寝るネ。」
凄く怒ってる…ってゆーか、めちゃくちゃ目が冷たい。
会話はなんとかしてくれるみたいだが、まるで俺とは関わりたくないみたいな態度を取られる。
(あれェェェェ?俺、神楽怒らすようなこと何かしたかァ?)
当然ながら身に覚えはなかった。
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