ポプ
□rips
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私の仕事はメイクアップアーティスト兼アーティスト。
年に4度行われるポップンパーティに招待され、その上此方でもメイクの仕事を任された。
メイクの仕事は好きなので苦に思わないし文句は一切無いが、疑問に思う所がある。それはあるグループの1人のメイクだけする様にとの事だった。
相手が誰なのかさえ分からない。
自分の身支度は後回しに早速その人の待つ楽屋へ足を運ぶ。
「なんだ。やっと来たのか」
え、ちょっと待って。
ビックリした。
私がノックする前にその人が扉を開いたという事にも驚いたが
「ユーリさん?!」
相手はあの有名グループDeuilのボーカルを務めるユーリさんだった。
驚くあまりぽかーんとしたまま突立っている事に痺れを切らしたのか
「いつまでそうしているつもりだ。」
と冷たい眼差しで私を見やった。その言葉にはっとして私は急いで楽屋の中へ足を踏み入れる。
セット台に座ってもらったはいいが、息を飲む程綺麗な顔立ちに正直私はたじろいた。
ファンデーションを乗せなくとも白くキメ細かい肌。鼻筋はすっと通り、血のように赤い瞳を守るように並んだ睫は女性のものより長い。
「メイク必要‥?」
ポロっと口から本音が出た。
それがユーリさんの耳にも届いたようで、綺麗に整えられた眉がピクリと動く。
「何をしている。」
「いえ‥綺麗だから見とれていて‥」
「語宅はいい。早くしないか。」
目を瞑り呆れた様に溜め息を吐く。
それが合図になった様に
「それでは失礼致します。」
ユーリさんの洋服が汚れぬ様クロスを着けさせてもらい、メイクボックスを広げ無意味だと思いつつもメイクをし始めた
「後は口紅をひくだけです。」
クロスを外し、使い終わったパクトやブラシを片付ける。
最後に使う口紅とハケだけテーブルに並べ鏡に写るユーリさんに話しかけた。
「紅はまだいい。」
そう放った刹那、何を思ったのか腕をガッチリ捕まれユーリさんの方に引き寄せられる。
「え、っと‥」
「お前とこうした後でいい」
顎を掴まれ抵抗できない私は上を向かされた。
と思えばユーリさんの綺麗な顔が近付いてくる。
現状を理解出来ないまま、自分の唇に柔らかな感触の物が重なる。
触れるだけだったそれは段々激しさを増し、私の息が乱れるまで続いた。
「あの今‥キス、しました?後私を指名したのは、ユーリさんですか?」
「ああ。二人きりになりたかった。だから私は君にメイクを頼んだ。」
「何故‥?」
そう問いた私に彼は口許に手をやり妖艶な笑みを浮かべてこう言い放った。
「私は君を愛しているからだ。」
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