花びら

□十分甘いから
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万年プー太郎の銀さんに珍しく多めに依頼料が入ったので、安いのが売りのでにいすで甘味を貪る事にしたらしい。
付いてきたのはいいんだけど、ね…。

「多い!」

「たまにしか食えねェからいーの」

テーブルに並ぶのは、満漢全席もかくやと言うほど大量の甘味、甘味、甘味…。見ているこっちの方が胸焼けを起こしそうだ。もちろんそれを黙々と食べ進めていく銀さんにも。周りもドン引きだよ。
ムカムカをコーヒー(ミルクとスティックシュガー一本のみ、絶対に銀さんには飲めないシロモノ)で流して溜め息をつく。と、次々と品を運んでくるウェイトレスさんのにこやかな顔が、影で歪むのを見てしまった!営業スマイル万歳!
この様子じゃもうここには来れないだろうな。

前に目を戻すと最初に手をつけたチョコパはすでに胃の中に消えてしまっていた。次に手を伸ばしたのはサンデー…。
前から思っていたのだが、パフェとサンデーの違いとはなんだろうか。見た感じ生クリームだし、チョコかかってるし、名前が違うだけかな?
聞こうとしたが恍惚の表情を浮かべる銀さんを引き戻してはいけない気がする。色んな意味で。またコーヒーを啜ってから、それとなく雰囲気を読んでみた。

「…おいしい?」

「最高!」

デレデレする銀さんは最高にキモ…いや、最高に楽しそうである。心なしか目、煌めいてない?「いざという時」専用ではなかったという事か。良かったね。
コーヒー、なくなっちゃった。お代わり頼もうかな…やっぱりいいや。

手持ちぶさたになった私はテーブルの上の皿と、それをたいらげていく銀さんを交互に眺める。サンデーの最後の一口を口に入れた後、ショートケーキを切り崩しにかかった。
どんだけお腹空いてたの。しかもそれを甘いもので満たすなんて理解不能だ。

「私、辛党なんだけどな…」

蕎麦にもわさび、寿司にもわさび、およそ食べられるものにはみんなわさびをつける。どっかの誰かさん達みたいに節操なく、って訳じゃないけど。
…あ、れ?よく考えたらわさびって渋くない?おばあちゃん?甘いものでデレデレしてる銀さんの方がよっぽど乙女じゃない?
…私、負けた。二十代男性に、嗜好で負けた。

心の内でがっくりと肩を落とした私に銀さんは眉をひょいと上げた。で、スプーンをくわえたまま話し出す。行儀悪いよ。

「お前、わさび派だっけ?…唐辛子派じゃないんならマヨ方くん的には安心だけどね」

「は?だれ、マヨ方」

「まぁそれはそれとして」

適当に誤魔化した銀さんはニヤリ笑うと。甘味の得意でない私が数少ない食べられるもの、ココアパウダーたっぷりの、ティラミスを一すくい私の口に押し込んだのだった。

「例え辛党でも、銀さんはおいしく頂けちゃうんだけどね」







さて問題、ティラミスの日本語訳は?
それくらい知ってるよ、そう言おうとして、なんとなく銀さんの言わんとする事が分かってしまった。だって目が優しいから。

「…"私をハイにして"」



***

同じくでにいすにて、

「いいなぁいいなァ!万事屋ばっかりずるいなァ!俺もお妙さんにバーゲンダッシュあーん(ハート)ってしたいなァ!」

「近藤さん、静かにしないと旦那に見かりやすぜィ」

「これで万事屋にバレたら半殺しだろうな。つかハートうざい」

「…しょうがない。トシ、総悟、あーんってさせてくれ」

「「断る」」

「一言!?ひどい!」



どうやら見てたらしいよ



10.10.10 銀時生誕祝



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