花びら
□プレゼント
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ここは宇宙海賊春雨第七師団が師団長、神威様のお部屋である。その団長様に呼ばれてきたのだが…今の私の心境はまさに蛇に睨まれた蛙、いや、兎に笑いかけられたしがない人間だろうか。
「あ、の…神威様…?」
「ん、なんだい?」
「ち…近くないですか?」
その距離、僅かに二十cmとったところ。それでも表情は変わらずにこにこにこ。この方は笑っていらっしゃっているからと油断は出来ない。気を抜くと蹴りや拳が飛んでくるので。
「うあっ!」
「あちゃー外したかー」
目が泳いだのに気付かれてしまったらしく案の定拳が飛んでた。ギリギリで避けたが風圧がすごい。髪を結んでいた紐が風に持っていかれて、髪が肩に散らばった。
それを神威様は一房取り、その長い指に絡めてまたにこりとする。まったく顔だけは整ってるんだから!思わず私は赤面してしまう。
「ねぇ、君は今日何の日か知ってる?」
「へ…?」
まったく分からない。まったく分からないが正直に答えるのは憚られる。私は必死に脳内のカレンダーをめくった。
「えっと…六月一日、六月一日…」
「まさか忘れたなんて言わないよね?」
「ええもちろんです!」
指に籠められる力が強くなった。このままだと髪が餌食になってしまう…!何か引っ掛かる物はあるのだが、いつも止めてくれる阿伏兎様もいないので大ピンチだ。…ん?阿伏兎様?
「…あ!」
「やっぱり忘れてたんだ」
やっと思い出しましたがずっと忘れていた訳ではないのです。だって阿伏兎様がいないのは、特注のケーキを頼んだからなのですから。
そう言うと神威様は私の頭にチョップを食らわせてきた。かなり痛い、頭割れそう。
「…お誕生日おめでとうございます」
痛みを堪えて、私に出来る精一杯の笑顔で笑いかけると、神威様は私を抱き締めて耳元で囁いた。
「ありがとう…プレゼントは君でいいから」
色々と言いたいことはありますが、とりあえず痛いので力を緩めてください。
プレゼント
これじゃあ私ばっかり嬉しいじゃないですか。
10.6.1 神威生誕祝