花びら

□体温
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二度と会えないなんて、嘘だ。


身を切るような冷たい風の吹く明け方、俺は白い息を吐きつつ仲間が来るのを待っていた。俺達は派兵される事になったのである。攘夷戦争が始まって久しい。子供であった俺達は大人になった。長い、本当に長い戦だ。
ちらほら集まり始める奴らの中にはもちろんヅラも高杉もいる。共に学んできた奴らもいる。そいつらは揃いの白い鉢巻きを締めて目付きを鋭くしている。
仲間。かつての俺には縁のなかったもの。

縁を作ってくれたひとはここに残ると言って聞かなかった。私はやる事があるから、と。誰が何を言っても。特に高杉は懸命だったように思う。
その先生が、俺の肩を叩いた。

「いよいよ、ですね」

「…分かってる」

何か下らない事で言い争っているらしいヅラと高杉に目を向けながら答えると、苦笑が返ってきた。アイツら、こんな時に、バカじゃねェの。呟いたらその苦さが深くなった。

「あなた達という人は、本当に変わらないな」

「なんかオヤジくせェよ先生」

「そりゃあなた達に比べたら大分オジさんですから」

「…確かに」

言って、笑い合う。アイツらバカに出来る俺でもなかったな。こんな時に、こんな時でも、笑える。
太陽の光が地を差す。朝焼けがゆっくりと辺りを照らした。

「行くぞ!」

誰かが声を上げる。つられて荷物を背負い直す。前の方の奴らは歩き出した。
…唐突に、手を出されて首を傾げた。なに?と間抜けな声が出たが手を伸ばした。冷たい風の中ではことさら温かく感じる握った手は優しくて、しかし刀を握る人の手だった。

「行ってらっしゃい、銀時」

「…行ってくらァ」

「銀時!」

「おう」

ヅラに呼ばれて足を踏み出しかけた。のに、やはり唐突に、今度は頭に手が乗せられた。

「大きくなりましたね」

懐かしい既視感。これは、あの時の。今思い出させるのかよ。ちくしょう。
唇を噛み締める。

「ただいまって言うまでくたばんじゃねェぞ!」

分かってますよ、言ったあのひとのお陰で俺はここに在るのだ。



体温を知ってしまってからもうずいぶん経つ



あの日の温度は俺とあのひとの生きた証。




―――――

「ぐらぐら」様提出。
テーマの「旅立ち」で攘夷ズしか出てこなかった残念な頭ではこれが限界でした…。あ、ちなみにCPではありません。
先生が頭撫でる所は三十巻の第二百五十九・二百六十訓を想像して頂ければ…。アニメだと第百八十話ですかね。

それでは、参加させて頂きありがとうございました。

10.1.20 煌





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