様々なカプを書く企画(仮)−ブック01
□【ヒョウタ受け】コウキ
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「ヒョウタさーん!」
ひみつきちの入口から覚えのある声がして、ヒョウタは視線を向けた。化石を磨くのをやめて入口にむかって叫ぶ。
「どうぞー」
おじゃまします。の声のあと出入り口が開く。そこに現れた姿は予想通り、可愛い後輩だ。
自分より5つ年下で、ヒカリやジュンより3つ年上。昔から年齢のわりに落ち着いているのはさすが博士の助手といったところか。
「どうしたの? コウキくん」
「えっと、実は進化させたいポケモンがいるんです。それで」
「ああ、進化の石? ちょっと待ってて」
ごそごそと角に設置した箱を漁る。化石は大切に飾っているが、その他のものは扱いがずいぶん雑だった。やがて奥底から進化の石を数種とりだす。
「ほのおのいしと、リーフのいし、つきのいしは持ってるけど……これで大丈夫かな?」
「あ、はい。進化させたいのこの子たちなんで」
最近イッシュから送ってもらったという、猿3匹の入ったボールを差し出す。それぞれとしっかり目があった。
「あー、でも、みずの石も必要なんですよね……」
「じゃあ見つけたらあげようか?」
「わー! ありがとうございますっ」
ボールをしまい、ヒョウタからほのおのいしと、リーフのいしを受け取ったコウキは花が咲き誇るような笑顔で笑った。年より幾分幼く見えるその表情にヒョウタも思わず笑みをこぼす。
「自分で掘らないの? 楽しいのに」
「苦手なんです。こまかい作業。それにあんまり力もないし」
「そんなの徐々につけていけばいいよ。なんなら教えてあげようか?」
「手取り、腰取りってやつですか?」
上目遣いに尋ねてくるコウキに、まぁそういうことになるかなと返す。途端に彼は顔を下向けた。耳が少し赤い。
「? どうしたの、コウキくん」
「ヒョウタさんって大胆ですね」
「え? なんのこと?」
「手引きするのが好きなタイプだったなんて……。あの、でも、僕、頑張りますから!!」
「え、えーっと、頑張って、ね?」
微妙にかみ合っていない気もするが、きっと気のせいだろうとヒョウタはコウキの筋力作りを応援する。コウキのほうはぶつぶつと、図鑑完成のための時間はいついつまでにして、そのあとはトレーニングと呟いていた。
「ヒョウタさんに見合う男になります!」
「へっ!?」
いまなにか不穏な言葉が聞こえた気がしたが、とヒョウタが問いただすより先に、コウキは彼の手を握り「明日からよろしくお願いします!」と叫んだ。そしてそのまま走ってひみつきちからいなくなる。残されたヒョウタは意味不明な(むしろ理解するのが怖い)コウキの言葉を必死に押し込めつつ、なぜか少しだけ熱い手の平の感覚と戦っていた。