様々なカプを書く企画(仮)−ブック01

□【デンジ受け】バク
1ページ/1ページ

「なぁ、デンジ兄ちゃん」

「ん、なんだ?」


ジムのデンジ専用控室。正確には改造作業ルームに遊びに来ていたバクが真剣な声音で呼びかけた。彼はバクのほうを見ることなくそれに応える。


「デンジ兄ちゃんはさ、兄貴が好きなんだろ?」

「……は?」


聞き捨てならない内容に、今度はデンジの視線もバクに移る。彼は顔を伏せてしまっていた。なにやら悲痛な空気がバクをまとっている。


「みんな言ってる。俺も二人はすごい仲が良いって思う。でも俺だってデンジ兄ちゃんが好きなのに!」


予想もしなかった言葉にデンジは目を瞬かせ――やがて小さく笑った。それはしっかり見ていないと分からないぐらいの些細な変化。


「言っておくが、あいつとはそんなんじゃない。そうだな。もし嘘だったら今後一切エレキブルの話しはしないと約束してもいい」


デンジがそれはもう、改造よりも大事にしているエレキブルだ。彼を引き合いに出せばそれでバクもオーバとの仲がそういうものではないことを納得したようだった。それでもまだどこか不服そうな彼にデンジが歩み寄る。目の前に立つと随分な身長差だ。相手はデンジより一回りと少し年が離れているのだから無理もない。


「そうだな。その気持ちがずっと変わらないなら、いつか考えてやってもいいぞ」


そう、余裕の表情で告げて、バクの唇に口付けを落とす。突然のしかも初めてのキス。あまりの衝撃に固まってしまったバクにデンジは笑いかけ、さて、と背を伸ばした。


「必要なネジがきれてしまったようだから、買ってくる」


無造作に置かれていた財布をポケットに突っ込む。いよいよ部屋から出ようとしたところで彼の歩みはとまった。いや、止められた。彼の腕を掴み、引き寄せたバクの唇がデンジの頬に触れる。


「絶対変わらない! だから首を洗って待ってろ!!」


羞恥と怒りとが混ざった表情。デンジが彼に言った言葉も行動もバクをバカにしていると感じたのかもしれない。そして自分がとった行動に自ら恥じているのだ。
高らかに宣言したバクはデンジの横を通り抜け、先に部屋を出ていく。残されたデンジは、そのセリフは違うだろうとまともなツッコミを心に浮かべつつ、彼の今後の成長に少しだけ胸を躍らせていた。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ