様々なカプを書く企画(仮)−ブック02

□【デンジ攻め】ナタネ
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色とりどりの花をバランスよく組み合わせ、ナタネはブーケを作り上げていく。最後に華やかなリボンを結ぶことも忘れない。その様子を黙って眺めていたデンジは唐突に口を開いた。


「よくそんなもの作れるな」

「慣れてるからね。あ、デンジくんが欲しいハーブは右から三番目の引き出しの中だよ」


ナタネの家を訪れた時、デンジはなにも言わなかったが彼女は彼のポケモン達が好んでいるハーブを取りに来たのだと悟っていた。ただ、ブーケ作りに集中したかったので、すぐにはその場所を教えられなかったが。


「ところでなんでブーケなんて作ってるんだ」


引き出しからハーブを取り出しながら尋ねると、ナタネは満面の笑みをたたえて答える。


「今度うちのジムの子が結婚するの。ブーケトスのブーケは私に作って欲しいんだって。これは試作品」

「好かれてるんだなお前。しかし、結婚か……」

「うらやましいよねぇ」


ナタネは二個目の試作品を作り始める。一個目を作り上げたことでだいぶ肩の力が抜けていた。


「本当に花が好きな子でね、ジムの門下生になりたいって夢がもともとあったんだけど、それなら絶対ここのジムだって思ってたんだって。私も初めて彼女と会った時、この子にはここで働いてもらわなきゃ! と思ったの」

「ふーん」

「結婚相手との出会いも素敵なのよ。彼女が六歳のときね、ちょっと嫌なことがあってソノオの花畑で泣いてたんだって。そしたら彼が現れて花冠をプレゼントしてくれたらしいの。それからもうずっと、二十年近く付き合ってるとか」


へぇ、とデンジは気のない相槌を打つ。それは彼には珍しくないことなのでナタネも特に気にする様子はない。聞いていないようできちんと聞いていることもわかっているからだ。それからナタネは彼女からきかされたエピソードをたくさん話した。憧れるシチュエーションばかりで羨ましいと時折こぼしながら。デンジはなにをしているのか相槌を打ちながらごそごそ手を動かしていたが、話しながらブーケをつくっているナタネには詳しく確認する余裕はない。


「なぁ、お前にはそういう予定はないのか?」


一通り話し終えたところでデンジが尋ねる。一瞬手をとめ、ナタネは声をあげて笑った。


「やだなぁ、私には結婚どころかまだそんな相手もいないもの! もー、それぐらい知ってるくせにっ」

「そうだよな」


事実だとしても少し失礼なあっさりとした肯定。その後、ナタネ頭の上に影が落ち目の前のテーブルに映る。それでデンジが背後に来たことを知った彼女は、どうしたのか問うべく顔をあげようとした。しかしそれより早く、頭上になにかの重みを感じる。指先で触れてみるとどうやら花のよう。もっとしっかり確認すると花冠だとわかった。


「……え?」

「似合ってる」


困惑するナタネにデンジは滅多に見せない笑顔を向けると、じゃあこれはもらっていくからをハーブをちらつかせた。そして本当に部屋を出ていく。なにもかも中途半端な状態で残された彼女は、綺麗に作り上げられた花冠を手に、これはどういう意味か、いったいどうすればいいのかと、その処遇に困っていた。

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