携帯獣(BL)−ブック
□入試前夜/留守電/ドラマ
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【入試前夜】 ※現代設定。
「え、外ですか?」
明日は入試本番。最後の追い込みをしていたファイアは、恋人であるレッドからの電話に首を傾げた。言われるまま窓まで歩いていき、カーテンの隙間から外を見つめる。
「あ!」
黒いコートに身を包んでいるレッドが、携帯を握っていない方の手を振った。ファイアは部屋を飛び出す。エレベーターは使わず、五階から一階へ階段を駆け降りた。エントランスを通り、外に出る。
「……別に、おりてこなくてもよかったのに」
「いやいやレッドさんがそこにいれば向かいます。っていうか何処にいたって来いと言われれば行きますよ!」
熱弁するファイアにレッドは笑った。と言っても、笑ったと判断できる人はそう多くない。
「明日試験でしょ……」
「はい、明日です。絶対合格してみせますよ。レッドさんと同じ学校行きたいですから」
「うん、頑張って。……ごめんね、本当はお守りとか買おうと思ったんだけど……」
「いいですよ、そんなの全然! こうして来てくれただけで俺、嬉しいです!」
両拳を握って言葉を紡ぐ。ちょっと困った表情になったレッドは、ファイアが部屋着として使っている羽織を掴んだ。そのまま軽く引き寄せる。
「レ、レッドさん!?」
頬に軽く触れた唇が離れる。ファイアは左頬をおさえた。熱い。
「お守りの代わり……。して欲しいって言ってたし……その、合格したら口にする、から」
それだけ言って、レッドは帰っていく。残されたファイアは茫然と背中を見送った。