携帯獣(NL)−ブック

□初詣で/雨宿り/親友
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【初詣で】


長い長い列に並んで、やっと回ってきた自分たちの番。マナーに則って二礼二拍一礼するヒカリとは対照的にジュンはやや乱暴に――というべきか、気合だけはたっぷり溢れて手を合わせる。


「ジュン、ちょっとこっちにきて」


お参りが終わるや否や、ヒカリはそういってジュンを人気のない場所へ引っ張っていった。立ち止り、掴んでいた手を放すと、背を向けたまま言葉を紡ぐ。


「さっきのあれなに」

「あれって?」

「恥ずかしいと思わないの」


ヒカリのことだ、作法に則らなかったのが気に食わなかったのだろうとジュンは受け取った。彼女が次の行動を起こすまでは。突然振り返ったヒカリがジュンのマフラーを引っ張る。いきなりのことになすがままのジュンの唇に、ヒカリは自分のそれを合わせた。


「キ、キスして欲しいならしてあげるから! もう二度と『ヒカリがキスしてくれますよに』なんてお願いしないで!」

「え、なんで知って」

「全部声に出てるのよ、バカジュン!!」


真っ赤になって駆けだすヒカリを、いろんな意味で衝撃を受けたジュンは追いかけることができなかった。
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